小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
正常咬合者と叢生者の咀嚼筋活動差に関する研究
Hellmanの咬合発育段階に基づいて
旭爪 伸二
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 26 巻 3 号 p. 535-555

詳細
抄録

本研究は,正常咬合者と叢生者の比較により,各咀嚼筋間の発育段階に基づき差異の生じる原因を知る目的で顎顔面形態,歯列模型,咬合接触個数,咀嚼筋筋電図の分析を行った.被検者はHellmanの咬合発育段階IIA,IIIA,IIIC,IVAの対照群と叢生者群各10名,合計80名であり,以下の結論を得た.
1)側貌頭部X線規格写真と,歯列模型の分析では,叢生者群は上下顎骨の前後的な奥行きが小さく,上下顎の歯列弓が小さいという形態的特徴をもっていた.
2) 咬合接触個数は,IIICとIVAで,叢生者群の臼歯部および総数が有意に少なかった.
3)筋電図積分値による分析では,両群ともに従来の報告と同様の結果が見られた.
4)片側咀嚼の積分値による分析では,咬合の発育により,咀嚼筋は咀嚼側のMの働きがより優位になることが,両群に共通した傾向と考えられた.
5)対照群の咀嚼リズムは,IIIAを除いて安定しており律動的であったのに対し,叢生者群ではIIIC以降も変動が大きく,律動性に欠けていた.
6)叢生者群のSP出現頻度は低く,SPDもすべての段階で対照群より短縮していた.
7)本研究結果から,咀嚼筋積分億で叢生者群にみられた特徴的な咀嚼パターンを生じさせる原因に最も近いものとして咬合接触個数が考えられ,上下顎の咬合の調和が重要であると思われた.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top