抄録
4歳7カ月の男児で上顎右側第二乳臼歯が完全埋伏している症例を経験し,これを開窓,牽引誘導した.
本症例は,上顎骨の劣成長に伴う反対咬合を呈し,骨年齢は暦齢より約2年の遅れを示した.なお,全身的,局所的に第二乳臼歯の埋伏に関連すると思われる所見および既往は認められなかった.
牽引誘導には,保持装置に矯正用ブラケットおよびフック付きインレー,誘導矯正力にエラスティックスレッド,アップライトスプリング,固定源としてリンガルアーチを応用した.そして,約12カ月で上顎右側第二乳臼歯を歯列内に誘導できた.
牽引誘導後のオルソバントモグラフX 線写真所見より,上顎右側第二乳臼歯の後続永久歯である第二小臼歯の歯胚の存在が確認されたが,第二小臼歯の歯胚は転位像を示していた.
永久歯の萌出時期に約2年の遅れが見られるが,齲蝕以外の不快事項は生じておらず,引き続き経過観察中である.