小児歯科学雑誌
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乳歯生活歯髄切断処置におけるX線学的経過観察
水酸化カルシウム系剤使用例について
中島 正人信家 弘士三宅 雄次郎森尾 善子宮迫 隆典長坂 信夫
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1988 年 26 巻 3 号 p. 611-620

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抄録

広島大学歯学部附属病院小児歯科外来において,昭和55年1月より昭和60年12月までに,水酸化カルシウム系剤(カルビタール)による生活歯髄切断処置をおこなった乳歯のうち,無作為に抽出した100歯(男子42名,女子37名,計79名)に対し,X線学的にてその経過を観察し,検討をおこなった.なお,経過観察のために使用したデンタルX線写真は,読影可能なもののみを用いた.その結果は,以下の通りであった.
1.最終観察時に経過良好と判定されたのは74歯(74.0%)で,経過不良と判定されたのは26歯(26.0%)であった.観察期間別にみると施術後24カ月以上30カ月未満において経過不良を多く認めた.
2.本調査, 検索では, 生活歯髄切断処麗後に撮影されたデンタルX 線写真をすべて読影,精査し,その都度経過を判定したため,経過観察症例数は197例となった.その経過観察時の成績では,施術後24カ月までは不良発現率が低いが,24カ月以上30カ月未満においては高く認めた.
3.歯種別および施術時年齢別の成績では, ほとんどの症例において施術後30カ月までに不良が発現しており,歯種間では下顎第2乳臼歯に不良の発現率が高く,前歯部で低かった.また,施術時年齢別では4歳,5歳において不良の発現率が高かった.
4.本調査における不良例26歯について,不良と判定された際の異常所見は,内部吸収16歯,歯根の異常吸収9歯,白線の消失18歯,根尖部または根分岐部歯槽骨の吸収16歯であった.
5.庇蓋硬組織(Dentin Bridge)の形成は,X線学的に,施術後2カ月より発現を認め,33歯41根管に認められた.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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