抄録
味覚の順応が唾液分泌量にどの程度影響を与えるかを明らかにするために,被験者(12人)の口腔に味覚溶液(80,30%砂糖溶液,15,5%塩化ナトリウム溶液,0.5,0.1%クエン酸溶液)で持続刺激(30ml/min)を行い,その間の耳下腺唾液分泌量の変化を調べた.分泌量の測定方法は,風防電子天秤内のビーカーに流れ落ちる唾液(Lashleyカニユーレ使用)を連続的に計測し,ペンレコーダに記録した.レコーダのチャート用紙に描かれた曲線より,1分間の唾液分泌量を計算にて求めた.
その結果,全ての被験者で味覚の順応につれて唾液の分泌量が減少を示した.刺激開始後,最大分泌量を得るまでに平均6.4±3.1(S.D.)秒要し,Half-time(分泌量が最大値を示してからその値が1/2になるまでの時間)の平均は11.4±5.8(S.D.)秒であった.各溶液とも濃度の高い方が最大分泌量は有意に(p<0.01)高い値を示したが,最大分泌量を得るまでの時間,およびHalf-timeには,味覚の種類,濃度差によって有意差は認められなかった.これらのことから,味覚の順応の影響による唾液の分泌量の減少は,唾液のシュガークリアランスに関して考慮すべき一因子であることが示唆された.