小児歯科学雑誌
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乳歯エナメル質切削面に対する酸エッチング効果
(II)エッチング時間の影響
細矢 由美子城臺 維子後藤 譲治
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1988 年 26 巻 4 号 p. 790-804

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抄録

エッチング時間が,切削乳歯エナメル質に対するエッチング効果に及ぼす影響について観察する事を目的に本研究を行った.資料としては,抜去もしくは脱落したヒト健全乳前歯40歯の唇面を用いた.同一歯牙をエナメル質の外層,中層,内層の切削深さ別並びに切端部,中央部,歯頸部の切削部位別に9分割した.エッチング材は,40%正燐酸ゼリーを使用し,エッチング時間は,10秒,20秒,30秒並びに60秒とし,水洗は30秒間行った.エッチング面をSEMで観察した結果,下記の結論を得た.
1)9分割を行った40歯,360部位中,359部位(99.7%)において,エッチング後に小柱構造が出現し,エッチング型としては,356部位(98.9%)に小柱周囲が強く溶解した像が観察された.
2)エッチング時間が30秒及び60秒の場合と比較し,エッチング時間が10秒及び20秒の場合では,溶解部位が不明瞭なエッチング型の出現率が高かった.
3)60秒のエッチング時間では,過度のエッチングをひきおこす場合があり,特にエナメル質内層でそのような傾向が認められた.4)切削乳歯エナメル質に対するエッチング時間は,30秒で十分と考える.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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