小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
薬剤(次亜塩素酸ナトリウム溶液)漏出を招いた症例
小椋 正旭爪 伸二西田 裕光早稲田 睦子田代 正昭
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 27 巻 1 号 p. 153-160

詳細
抄録

薬剤漏出による3 歳男児の皮膚糜爛を生じた症例を経験したので, 皮膚の時間経過を中心に報告し,合せてウサギによる実験の病理所見とボランティアの人7名のパッチテストを行った結果次のような結論を得た。(1)表皮の皮膚障害は,約1年経過すれば完全に回復するが,真皮の皮膚障害は3年経過すると注意しないと解らない程度にまで色は薄れるものの痕跡は残っていた。(2)過酸化水素溶液のウサギへの貼布では通常使用する3%よりも4倍濃度の高い12%の溶液の24時間以上の貼布で真皮にまで変化が起こった。(3)次亜塩素酸ナトリウム溶液のウサギへの貼布では,通常根管拡大などに使用している10%溶液を20分貼布した時は表皮に40分以上の貼布では真皮にまで変化が起こった。(4)混合溶液のウサギへの貼布では,10%の次亜塩素酸ナトリウム溶液を単独で貼布したものより反応は弱かった。(5)アトピー性皮膚炎の人2名と正常な皮膚の人5名の上腕屈側に10倍稀釈液を48時間貼布したが,全ての人で何の反応も現わさなかった。(6)以上の結果から今回のこの糜爛は,アレルギー反応によるものではなく,一次刺激によるものだと考えた。また,最も注意を要する溶液は次亜塩素酸ナトリウム溶液であった。

著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top