小児歯科学雑誌
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永久切歯ならびに第一大臼歯におけるEctopic Eruptionの臨床的観察
熊谷 恵津子蔡 淑玲野坂 久美子山田 聖弥甘利 英一
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キーワード: 永久切歯, 第一大臼歯
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1989 年 27 巻 1 号 p. 30-40

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抄録

Ectopic emptionについて,岩手医科大学小児歯科外来を訪れた患児4,324名のX線写真,石膏模型ならびに病態写真を用い,その出現状況や歯,ならびに歯列弓の大きさ,さらに混合歯列, 永久歯列期における歯列状態を検索した。また, ectopic eruption の調査部位は,group I :上・下顎中切歯,group II :上・下顎側切歯,group III :上・下顎第一大臼歯,group IV :group I-IIIの混合の4つに分類して行った。その結果,つぎのような結論が得られた。全体のectopic eruptionの出現率は5.6%であり,性差はみられなかった。しかし, 分類別では, Group I の出現が全体の半分以上を占め, Group III は非常に少なく, 全体の ectopic eruption の4 . 6 % にすぎなかった。また, Group I-III では,下顎よりも上顎での出現率が高かった。性別では,Group IIIは男児に,Group IIは女児に高い出現が認められた。また,中切歯は両側性に,下顎側切歯と上顎第一大臼歯は片側性に多くの出現を示した。Ectopic eruptionの歯の歯冠幅径はやや大きい傾向にあるが小野の平均値との間に有意差はなかった。しかし, 切歯部の ectopic eruption の場合,その歯数が多くなるほど,乳犬歯間距離は小さくなっており,咬合誘導が行われずに永久歯列に移行した症例では,Basal Arch Lengthと歯列弓長径が大きく,Basal Arch Widthと歯列弓幅径は小さかった。乳歯列から永久歯列まで経年的に観察した症例では,混合歯列期の前歯部は叢生が多く,半数以上の症例に咬合誘導が行われた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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