抄録
思春期における顎関節症の症状変動について,中学生;男性70名,女性75名,合計145名ならびに高校生;男性202名,女性227名,合計429名を対象にあしかけ3年,経年的に追跡調査し,以下の結論を得た。
1.顎関節症の調査期間中の発症頻度の経年的変動は,男女合計で中学生;1回目(1984年)10.3%,2回目(1985年)15.9%,3回目(1986年)15.9%,高校生;1回目11.7%,2回目18.4%,3回目31.0%であった。尚,各回の調査年度は,以下省略する。
2.顎関節雑音の調査期間中の発症頻度の経年的変動は,男女合計で中学生;1回目6.9% , 2 回目1 2 . 4 % , 3 回目1 3 . 8 % , 高校生; 1 回目9 . 3 % , 2 回目1 7 . 2 % , 3 回目2 8 . 2%であった。
3.顎関節部疼痛の調査期間中の発症頻度の経年的変動は,男女合計で中学生;1回目3.4%,2回目5.5%,3回目4.1%,高校生;1回目2.8%,2回目2.6%,3回目3.5%であった。
4.開口障害の調査期間中の発症頻度の経年的変動は,男女合計で,中学生;1回目0.7%,2回目3.4%,3回目4.1%,高校生;1回目1.2%,2回目1.6%,3回目2.3%であった。
5 . 顎関節症発症者の症状形態は単独症状者が圧倒的に多く( 中学生; 7 0 % ~ 9 3 % , 高校生; 8 8 % ~ 9 2 % ) , 症状内容は, すべての調査時において, 顎関節雑音が, 中学生で64.3%から83.3%,高校生で85.7%から97.1%と大部分を占めていた。複合症状者の症状内容については,顎関節雑音を軸に顎関節部疼痛ならびに開口障害が伴って発症する傾向にあり,発症の症状分布には,一定の傾向は示されなかった。尚,ここで示した百分率は,発症者総数に対する出現率である。
6.個人内の症状変動については,男女合計で3症状のいつれかの症状が,すべての調査時に出現した者は,総対象者中,中学生で2.8%,高校生で5.1%,調査期間中,1度は発症し,発症が持続しなかった者は,中学生で28.3%,高校生で34.5%であった。連続して発症した者(2回ならびに3回連続して発症を示した者)の症状において,顎関節雑音が安定していた。