小児歯科学雑誌
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移転歯の処置に関する考察
名方 俊介清水 賢二山口 和子
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キーワード: 移転歯, 前歯部配列
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1989 年 27 巻 2 号 p. 529-536

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抄録

歯の形成,萌出期の何らかの原因により,それぞれの歯が互いにその位置を交換して萌出している移転歯,即ち位置交換歯を伴う症例に遭遇することがある。これらの歯牙を配列するにあたって,位置の入れ替わったままの状態で配列するか,あるいは互いにその位置を入れ換えて配列するかを選択する必要がある。
そこで,移転歯の位置の交換した状態のまま配列した症例と,その位置を互いに入れ換えて配列した症例の治療経過を報告し,それらの症例を通じて以下の考察を加えた。
1.今回報告した症例の歯の移転の原因は,それぞれ先行乳歯の早期喪失,および永久歯歯胚の位置異常と推定した。
2.移転歯を伴う症例の治療方針を決定する場合,その移転の状態が完全型か不完全型か,根尖の位置と歯軸の傾斜の程度が判断基準となる。
3.移転歯を入れ換えて配列する症例においては,配列後の歯軸の平行性が,安定した術後経過を得るために極めて重要である。一方,移転した状態のまま配列する症例では,歯牙の早期接触を防がなければならない。そのため,上下顎の対咬関係,捻転や傾斜などの個々の歯の不正に対する歯牙移動および保定に注意を払う必要がある。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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