小児歯科学雑誌
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上顎永久前歯の歯根吸収に関する組織学的研究
原田 桂子有田 憲司西野 瑞穂
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1989 年 27 巻 3 号 p. 663-671

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抄録

永久歯の歯根は,乳歯歯根のように生理的には吸収されないが,過大な矯正力や隣接永久歯の異所萌出などにより吸収する場合がある。このような永久歯の歯根吸収については,いまだ不明な点が多い。
本研究の目的は,上顎犬歯の異所萌出により,著明な歯根吸収を生じ抜歯された中切歯および側切歯を用いて,その組織学的所見を明らかにすることである。被検歯は12歳4カ月の女子から得たものである。光学顕微鏡および走査電子顕微鏡による観察結果は次のとおりであった。
1.歯根の吸収面には,大小様々な吸収窩が認められた。吸収窩には,吸収窩縁が狭い線状のヘマトキシリン濃染部として認められ,直接吸収組織に接しているものと,細胞セメント質様硬組織で修復されているものとの2種類が認められた。
2.吸収窩には破歯細胞を全く認めなかった。
3.固有歯髄は,正常像を示し,内部吸収は認められなかった。
4.吸収面に接する歯髄腔壁には,多量の,石灰化度の低い象牙前質様硬組織が形成されており,原生セメント質には第二セメント質が添加されていた。
5.走査電子顕微鏡像で,吸収窩には,明瞭な象牙細管の細孔が観察されるところと,石灰化物の沈着によって吸収窩が浅く平坦となり,象牙細管が全く認められないところと,それらの間のさまざまな段階の像とが観察された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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