小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
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27 巻, 3 号
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  • 町田 幸雄
    1989 年 27 巻 3 号 p. 587-594
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本論文は咬合誘導装置に対し応用する目的で乳歯抜歯後の歯槽部の成長発育とその臨床応用について記述したものである。
    観察部位は,乳歯の早期喪失を来たしやすい上下顎乳臼歯部と上顎乳切歯部である。
    歯槽部幅径の変化は,いずれの部位でも減少期,安定期及び増加期の三つの時期に分けられる。減少期は抜歯後約4カ月間で終了する。増加期は後継永久歯の出齦約8カ月前から始まる。安定期は乳歯の抜歯時期により異なり,早く抜歯すればするほど長い。
    歯槽部幅径の減少は,上顎乳切歯部及び上顎乳臼歯部では,主として唇側あるいは頬側歯槽部の吸収に起因し,口蓋側歯槽部の吸収は殆ど起こらない。これに対し,下顎乳臼歯部での歯槽部幅径の減少は,頬舌側両側歯槽部における吸収に起因している。
    歯槽部は,後継永久歯の出齦約8カ月前から膨隆が始まる。上顎乳臼歯部と上顎乳切歯部では主として唇側あるいは頬側歯槽部が膨隆する。下顎乳臼歯部では頬舌側歯槽部両側から膨隆が始まる。そして抜歯前の歯槽部の大きさとほぼ同じか,やや大きくなった時点で後継永久歯が出齦する。
    この結果は,臨床において咬合誘導装置の設計,製作並びに装着後の定期検診の時期設定などに多いに役立つが,これと同時に正常な歯列,歯槽部及び口蓋の成長発育に関する知識を合わせ応用することが必要である。
  • 生野 伸一
    1989 年 27 巻 3 号 p. 595-606
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    哺乳動物は,出生後一定期間吸畷運動を行い,その後咀嚼行動へと移行していく。そこで,ヒトと同じ二生歯性である幼犬を実験材料として用い,中枢における吸畷から咀嚼への移行のメカニズムを明らかにすること,および,咀嚼中枢の発達に対する乳歯萌出の役割について明確にすることを目的として実験を行った。
    実験は,幼犬をウレタン麻酔下で頭部を脳定位固定装置に固定し,大脳皮質眼窩回表面を露出し,電気刺激装置を用いて咀嚼野に連続電気刺激を加えた。また,乳歯歯胚は,生後12-14日頃摘出した。
    まず,イヌの大脳皮質咀嚼野である眼窩回表面に電気刺激を加えた対照群では,生後15日未満の乳歯未萌出の幼犬では舌および下顎の運動は誘発されなかった。しかし,生後19-23日の乳歯萌出開始前後に至り吸畷運動が誘発され,生後24日以降の乳歯萌出後に咀嚼運動が誘発されるようになった。
    次に,乳歯歯胚を摘出した幼犬では,大脳皮質の電気刺激による吸畷運動は生後24-27日まで認められ対照群に比べ延長しており,生後28日以降は吸畷や咀嚼とは異なる開口優位の顎運動が認められ,咀嚼運動の誘発は生後41日以降に遅延していた。
    以上の結果より,吸畷野は眼窩回部に存在しており,吸畷から咀嚼への正常な移行ならびに咀嚼中枢の発育には,乳歯萌出に起因する口腔からの求心性Impulseが重要な役割を果たしていることが明らかになった。
  • 田中 光郎, 小林 慶子, 奥村 富士子, 小野 博志, 門磨 義則, 今井 庸二
    1989 年 27 巻 3 号 p. 607-611
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    酸処理歯面の回復現象については数多くの報告があり,電顕的観察,ヌープ硬さ,耐酸性,X線透過性などの観点から,酸処理前の状態に近いところまで回復する事が認められている。一方,エナメル質の酸処理によって表層のフッ素濃度の高い部分が取り去られるわけであるが,このフッ素についても回復現象がありうるのか否かを調べることを目的として以下のような実験を行った。すなわち,健全な左右両側乳中切歯唇面を酸処理し,一方を酸処理直後,他方を4週間後に,それぞれ表層のフッ素濃度をin vivoにおいて測定し,その差を検討した。
    その結果,4週の間にフッ素塗布などを行わない自然な口腔内状態で,酸処理歯面のフッ素濃度は有意に増加しており,この増加量は平均で50ppm程度であった。このフッ素取り込み量と関連している可能性のある,唾液と飲料水のフッ素濃度を測定したが有意な相関関係は認められなかった。また,齲蝕感受性との関連性を調べるために,第二乳臼歯の齲蝕罹患状態を一つの指標としたが,フッ素取り込み量との間に相関関係は認められなかった。
  • 第3報 エッチング時間の再検討
    細矢 由美子, 後藤 讓治
    1989 年 27 巻 3 号 p. 612-620
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    エッチング時間が, 非切削乳歯平滑面エナメル質に対するエッチング効果に及ぼす影響について観察する事を目的に本研究を行った。資料としては,抜去もしくは脱落したヒト健全乳前歯50歯の唇面エナメル質を用い,低速電気エンジンに装着したブラシコーンにより,注水下で30秒間歯面の清掃研磨を行った。エッチング材は,40%正燐酸ゼリーを使用し,エッチング時間は10秒,30秒,60秒,90秒並びに120秒とし,水洗は30秒間行った。
    エッチング面をS E M で観察した結果, 下記の結論を得た。
    1)エッチング時間が短くなると,エッチング後においても小柱構造が認められない症例が増加した。
    2)小柱構造が全く認められなかった症例は,エッチング時間が10秒の場合では,10例中4例(40%),30秒の場合では,10例中2例(20%),60秒の場合では,10例中1例(10%)であり,エッチング時間が90秒と120秒の両者においては,全症例に小柱構造が認められた。
    3)すべてのエッチング時間について最も発現頻度の高かったエッチング型は,小柱構造が不明瞭なものであった。
    4)ブラシコーンにより歯面清掃研磨後の非切削乳歯平滑面エナメル質に対するエッチング時間は,本研究で用いたエッチング時間中では90秒が望ましいと考える。
  • 第1報 カイウサギの乳歯歯根吸収におけるchemical mediatorとしてのプロスタグランディンの関与にっいて
    有田 憲司, 加藤 邦子, 東條 多恵, 西野 瑞穂
    1989 年 27 巻 3 号 p. 621-628
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    生理的な乳歯の歯根吸収におけるプロスタグランディン( P G s ) の関与について調べる目的で, P G s の合成酵素の特異的阻害剤であるインドメサシンを投与し, その影響を検索した。
    実験には,生後7日目のウサギ24羽(妊娠31および32日目に出産したもの)を用い,実験群(12羽)には5mg/kgのインドメサシンを12時間毎に腹腔内投与し,対照群(12羽)には生食水を投与した。両群のウサギは生後9日,11日および13日目に各4羽づつ屠殺し,7μ のパラフィン切片を作製して,上顎乳切歯の歯根面に出現した破歯細胞の数を測定し,かつ,歯根部の体積を定量し,以下の結果を得た。
    1.両群のウサギの上顎乳切歯は生後9日目から13日目まで経日的に破歯細胞の出現数は増加した。
    2.インドメサシンを投与すると,破歯細胞の出現数は有意に抑制された(9日目<p0.05,11,13日目p<0.01)。
    3.インドメサシンを投与すると,歯根吸収が抑制されたが,その後,抑制効果は急速に消失した。
    以上の結果から,生理的な乳歯の歯根吸収において,PGsがchemical mediatorとして介在する可能性が示唆された。
  • 第2報 カイウサギの乳歯歯根吸収におけるインドメサシンのdose-response効果について
    有田 憲司, 阿部 典子, 木内 晶子, 加藤 邦子, 西野 瑞穂
    1989 年 27 巻 3 号 p. 629-636
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    生理的な乳歯の歯根吸収にプロスタグランディン(PGs) が関与しているか否かを確かめる目的で以下の実験を行った。
    生後7日目のウサギ(妊娠32日目に出産した)16羽を,各群4羽ずつに分け,対照群には生食水を, 実験群にはPGsの合成酵素の特異的阻害剤であるインドメサシンを,0.1mg/kg,1.0mg/kgおよび10.0mg/kgのdose量で,共に12時間おきに9回投与し,生後11日目に屠殺した。上顎乳切歯の7μ の連続パラフィン切片を作製し,組織計量学的に歯根面に出現した破歯細胞の数と,乳切歯の体積を測定し比較した。その結果,
    1.出現した破歯細胞の数は,対照群が206.3±60.1個で,インドメサシン投与群は,0.1mg/kg群が249.0±32.2個,1.0mg/kg群が,199.5±15.1個(P<0.05片側検定)および10.0mg/kg群が163.8±40.0個(P<0.01) であり, インドメサシンの投与量に応じて破歯細胞の出現数は減少した。
    2.乳切歯の体積は10.0mg/kg群が0.1mg/kg群に比べ有意に大きかった(P<.05)。しかし,対照群と実験群との比較では10.0mg/kg群のみ大きな値を示したが,統計学的な差は認められなかった。
  • 第1報 患児の状態との関連性
    福田 理, 丸山 宏己, 鈴木 善子, 柳瀬 博, 渥美 信子, 黒須 一夫
    1989 年 27 巻 3 号 p. 637-644
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,心身障害児の歯科治療時に母親が治療室へ入室する,入室しないという母親の行動を生起させる要因を明らかにすることを目的とした。
    すなわち,愛知学院大学歯学部附属病院小児歯科外来へ通院する46組の心身障害児とその母親を対象とし,患児の能力,治療室内での行動などについて調査し,母親の治療室入室行動に影響する要因について検索し,以下の結果を得た。
    1)母親が入室する群の方が入室しない群に比べ,日常会話の理解能力,日常会話の表現能力,ブクブクうがいの能力でやや能力が劣る傾向がみられた。
    2)自閉症児は他の障害に比べ母親が入室する割合が高くなっていた。
    3)母親が入室する群の子供が入室しない群に比べ,全ての診療場面で行動評価得点が高く,相対的に不適応であった。
    4)数量化II類による分析では,治療室へ入室する母親,入室しない母親の判別効率の指標となる相関比は0.44と比較的高く,母親の行動の判別はある程度可能であった。
    5)母親の行動を規定する子供側の要因として障害の種類,言語表現力,うがいの能力,診療中の適応性の4要因が挙げられた。
  • 第1報 齲蝕罹患状況について
    久保山 博子, 石井 香, 尾崎 正雄, 田中 美絵子, 尾上 圭子, 塚本 末廣, 本川 渉, 吉田 穰
    1989 年 27 巻 3 号 p. 645-653
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    人口動態の少ない山村地区である佐賀県の富士町に在住する保育園,幼稚園,小学校,中学校の全小児810名に対して,歯科齲蝕疫学調査を行った。それらの調査結果より齲蝕罹患状況と処置状況等について次のことが明らかになった。
    1.乳歯齲蝕罹患状況は,3歳時にはdf歯数(8.8歯),5歳時にはdf歯数(10.7歯)であった。
    2.永久歯齲蝕罹患状況は,12歳時にはDMF歯数(7.7歯),14歳にはDMF歯数(9.9歯)であった。
    3.乳歯における男女差については,df歯数では11歳,df歯面数では6歳と11歳,f歯数では11歳を除いて性差は認められなかった。
    4.永久歯における男女差は,DF歯数,DF歯面数では5歳と9歳,F歯数,F歯率では7歳を除いて性差は認められなかった。
    5.乳歯の齲蝕は,乳歯萌出開始直後より急激に増加する傾向が認められた。
    6.永久歯齲蝕は,萌出開始から増加し小学校高学年頃より急激に重症化する傾向が認められた。
    7.乳歯齲蝕処置状況は,6歳時ではf歯数(4.1歯)であった。
    8.永久歯齲蝕処置状況は,14歳時ではF歯数(4.5歯)であった。
    9.幼稚園と保育園では,4歳児のdf歯数,df歯面数を除いては統計的に有意差は認められなかった。
  • 中島 正人, 信家 弘士, 三宅 雄次郎, 砂田 雅彦, 長坂 信夫
    1989 年 27 巻 3 号 p. 654-662
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯の齲蝕処置を行っている際に,露髄をきたし,歯髄処置を施さなければならない場合がある。露髄をした歯髄に対する処置の一つとして直接覆髄法があるが,乳歯の場合,歯髄への感染を起こしやすいため,永久歯に比べ直接覆髄処置の適応症が狭いと言われている。このため,小児歯科臨床においては,乳歯に対して直接覆髄処置を行うことが少なく,その後の経過を観察した報告は非常に少ない。
    今回,乳歯直接覆髄処置後の経過を評価する目的で,本学歯学部小児歯科外来を来院した3,675名の患児の診療録を調査し,以下の結果を得た。
    1)直接覆髄処置,生活歯髄切断処置,および抜髄処置をおこなった乳歯の総数は2,511歯で,このうち直接覆髄処置は124歯(4.9%)であった。
    2)直接覆髄処置後の経過を観察することができた乳歯100歯の臨床的成績は最終観察時において,良好例94歯(94%),不良例6歯(6%)であった。不良例はすべて18カ月未満に出現しており,特に6カ月未満において多く認めた。
    3)歯種別では,前歯部に臨床的不良例が多く認められたが,施術時年齢間では差は認められなかった。また,術後の修復物別では前歯部におこなったグラスアイオノマーセメントやコンポジットレジンに臨床的不良例が多く認められた。
    4)臨床的不良例における異常所見は,自発痛が2歯,歯牙の変色が1歯,歯肉の腫脹が1歯,膿瘍形成が2歯認められた。
    5)X線的に経過を判定できたのは66歯で,最終観察時の成績は,良好例58歯(87.9%),不良例8歯(12.1%)で,ほとんどの不良例が施術後24カ月未満に出現していた。
  • 原田 桂子, 有田 憲司, 西野 瑞穂
    1989 年 27 巻 3 号 p. 663-671
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    永久歯の歯根は,乳歯歯根のように生理的には吸収されないが,過大な矯正力や隣接永久歯の異所萌出などにより吸収する場合がある。このような永久歯の歯根吸収については,いまだ不明な点が多い。
    本研究の目的は,上顎犬歯の異所萌出により,著明な歯根吸収を生じ抜歯された中切歯および側切歯を用いて,その組織学的所見を明らかにすることである。被検歯は12歳4カ月の女子から得たものである。光学顕微鏡および走査電子顕微鏡による観察結果は次のとおりであった。
    1.歯根の吸収面には,大小様々な吸収窩が認められた。吸収窩には,吸収窩縁が狭い線状のヘマトキシリン濃染部として認められ,直接吸収組織に接しているものと,細胞セメント質様硬組織で修復されているものとの2種類が認められた。
    2.吸収窩には破歯細胞を全く認めなかった。
    3.固有歯髄は,正常像を示し,内部吸収は認められなかった。
    4.吸収面に接する歯髄腔壁には,多量の,石灰化度の低い象牙前質様硬組織が形成されており,原生セメント質には第二セメント質が添加されていた。
    5.走査電子顕微鏡像で,吸収窩には,明瞭な象牙細管の細孔が観察されるところと,石灰化物の沈着によって吸収窩が浅く平坦となり,象牙細管が全く認められないところと,それらの間のさまざまな段階の像とが観察された。
  • 田中 美絵子, 本川 渉, 林田 宏紹, 尾上 隆光, 吉田 穰
    1989 年 27 巻 3 号 p. 672-677
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは6 歳6 カ月の男児の上顎前歯部に3 歯の埋伏過剰歯を有する症例に遭遇した。X線所見からこれらが永久歯胚の位置異常の原因となっていることがわかった。また,これら過剰歯はすべて埋伏しており,方向は1歯が順生,他は逆生であった。順生歯の概形は,いわゆる正中歯の形をとっていた。歯冠の型は,順生は渡辺の分類の四錐型,逆生歯は,犬歯型であった。歯根はすべて未完成であったが,逆生歯において未熟度が特に大であった。また,患児の同胞(兄)にも過去に埋伏過剰歯抜去の既往があった
  • 竹内 弘美, 日置 弘子, 石倉 優香, 富沢 美恵子, 野田 忠, 福島 祥紘
    1989 年 27 巻 3 号 p. 678-691
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    特発性副甲状腺機能低下症は, 副甲状腺ホルモンの分泌が原因不明に低下し, 血清カルシウム値の低下と血清リン値の上昇をきたす疾患である。
    特発性副甲状腺機能低下症の1例について,経過観察をし,歯科的検討を加えた結果,以下の所見を得た。
    1)骨年齢は5歳から6歳程度で,歴齢との差がなく,骨化の異常は認められなかった。
    2)乳歯,永久歯ともに高度の齲蝕罹患傾向を示した。
    3)多数の永久歯において,形成不全,石灰化不全が認められた。
    4)X線所見において,乳歯,永久歯ともに全体的に歯髄腔が広かった。また,永久歯において,歯槽硬線が軽度に肥厚している部位が認められた。
    5)病理組織所見において,乳歯の象牙質に,形成不全,石灰化不全が認められ,セメント質では多発性の吸収が認められた。また,上顎右側第1小臼歯では,エナメル質の形成不全が認められた。
    6)上顎左側第2乳臼歯をX線マイクロアナライザーにより検索した結果,歯根部の象牙質が健全歯と比較して,Ca・P・Mgの強度が低いことが分かった。
    7)歯の所見より,11カ月から1歳6カ月までの間の発症が推察された。
  • 原田 桂子, 有田 憲司, 西野 瑞穂
    1989 年 27 巻 3 号 p. 692-699
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    1 2 歳4 カ月の女子において, 上顎左側犬歯の異所萌出により同側の中・側切歯の歯根がほとんど全て吸収された症例,および27歳女子において,上顎左側犬歯が同側中切歯の位置に萌出していた症例について,観察ならびに治療を行った。得られた所見ならびに治療法は次のとおりであった。
    1.犬歯の異所萌出による中・側切歯の歯根吸収は,極めて高度であり,歯根がほとんど吸収されていた。舌側では一部エナメル質にまで吸収が及んでいた。
    2.保存不可能な中・側切歯を抜歯した。その後,乳犬歯の歯根は全く吸収を受けておらず,永久犬歯の根尖が側切歯相当部に位置していたので,犬歯を側切歯部に誘導した。
    3.上顎左側犬歯が同側中切歯部に萌出していた症例では,機能的問題は認められず,患者が歯冠を中切歯の形態に修正することを望まなかったので,とくに治療は行わなかった。
    4.2症例とも乳犬歯が残存しており,永久犬歯が異所萌出した主原因は,萌出余地不足ではなく,犬歯の歯胚の位置異常や萌出方向の異常によるものと推測された。以上の観察,治療とあわせて,上顎犬歯の異所萌出による切歯の歯根吸収は重篤な問題を引き起こすので,これを予防するための方法について文献検索を行った結果,10歳頃には必ず口腔内の触診を行い,犬歯萌出相当部に犬歯を触れることが出来なければ,X線精査により犬歯の位置と萌出方向について,早期に診断し,適切な処置を施すことが大切であることが示唆された。
  • 蕭 思郁, 深尾 正, 紅露 政利, 船越 禧征, 稗田 豊治
    1989 年 27 巻 3 号 p. 700-707
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Prader-Willi症候群は,新生児期から乳幼児期にかけて筋緊張の低下が著しく,哺乳障害,体重増加不良などを伴い,その後,幼児期からは過食,知能低下,外性器発育不全など多彩な症状を現わす症候群である。
    今回,私たちはPrader-Willi症候群と診断された10歳5カ月女児の症例に遭遇し,精神発達遅延のため,協力性がえられず,全身麻酔下で歯科的処置を行い,次のような歯科的所見を得た。
    1.エナメル質形成不全,上下顎前歯部に叢生ならびに歯列弓の狭窄が認められた。高口蓋は認めなかった。
    2.歯冠近遠心幅径は,標準値に比較して小さい値を示した。
    3.頭部エックス線規格写真の分析結果から,上下顎の発育不全が認められた。
  • -第1報 特に齲蝕,歯列・咬合異常,食べ方の状態について-
    高梨 登, 納谷 賢一, 益守 真木雄, 中野 潤三郎, 大浜 綾子, 平田 順一, 赤坂 守人
    1989 年 27 巻 3 号 p. 708-715
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    昭和62年9月に実施した,東京都幼児基礎栄養調査の東京都内及び都下の保育園,幼稚園各6園の3歳児-6歳児1235名の資料をもとに,「乳歯齲蝕罹患状況」,「歯列・咬合異常」,「食べかたの状況」について,年齢別,及び保育園児と幼稚園児の比較などについて,他の同種の調査報告と比較検討し,以下の結果を得た。
    (1)本調査の4歳児の齲蝕罹患者率69.6%,一人平均df歯数4.7本は,厚生省全国調査の昭和62年度の齲蝕罹患者率83.4%,昭和56年度の一人平均df歯数6.1本より低かった。
    (2)保育園児に比べ幼稚園児に齲蝕罹患が高く,特に多数歯齲蝕を有するものが多かった。
    (3)歯列・咬合異常は,3歳~6歳児全体において,過蓋咬合12.9%,開咬11.4%,切端咬合10.7%の順で頻度が高かった。
    (4)食べ方の調査では,“堅いものでも好んで食べますか”の設問の回答では,“軟らかいものを食べたがる”が10.4%と高く,特に,“食べにくいものでもよく食べますか”では,“嫌がって食べない”と回答したものが,全体の17.1%にみられ,この傾向は幼稚園児に多く見られた。
  • 石田 良介, 安福 美昭, 宮本 充子, 大嶋 隆, 祖父江 鎮雄
    1989 年 27 巻 3 号 p. 716-724
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    当科を初診で来院した両側性および片側性の唇顎口蓋裂患児5 1 名( 2 - 5 歳) および定期診査中の68名(6-14歳)を対象として,その齲蝕罹患状態を調査し,健常児と比較した。
    その結果,唇顎口蓋裂患児の齲蝕罹患は健常児と比較して低年齢時より高く,増齢とともにさらに高まった。また,乳歯および永久歯の齲蝕経験歯率を歯種別に検討すると,唇顎口蓋裂患児の上顎前歯は乳歯,永久歯ともに高い齲蝕罹患性を示し,裂の存在が非常に大きな影響を及ぼしていた。さらに,上顎乳前歯および永久中切歯の齲蝕罹患状態を歯面別に集計すると,顎裂の存在による歯列不正および外科的侵襲による搬痕の存在と顎裂部の骨欠損による口腔前庭の欠如といった唇顎口蓋裂患児に特有な所見のために,自浄性が低い歯面において低年齢時より高い齲蝕罹患を認めた。
    これらの調査結果は,唇顎口蓋裂患児に対して口腔衛生指導を可能な限り早期から開始し,齲蝕予防処置を継続することが,同患児の歯科的管理を行う上で不可欠であることを示唆している。
  • 1989 年 27 巻 3 号 p. 725-817
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
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