1989 年 27 巻 4 号 p. 884-894
咀嚼筋の成長発達に伴う機能的変化を知る目的で,小児および成人について,規定動作時の筋電図パワースペクトルの周波数分析を行った。被験者は Hellman の歯牙年齢IIA期の男児5名,女児1名の計6名,年齢4.5±0.2歳および成人男子4名,女子2名の計6名,年齢27.7±3.8歳で,被検筋は左右の側頭筋前腹および咬筋,規定動作は軟化チューインガム咀嚼および最大咬合力によるクレンチングとした。表面電極により導出した筋電図波形から,高速フーリエ変換処理によりエネルギーパワースペクトルを得, パワースペクトルにおける6 2 . 5 ~ 1 0 0 0 H z の総パワー値を100%とし,低周波成分から順次累積して, 25, 50, 75, 90の各%値を得る累積周波数値を求め,筋出力パターンの分析を行った。得られた結果は次のとおりであった。1.チューインガム咀嚼時およびクレンチング時の,側頭筋前腹ならびに咬筋のエネルギーパワースペクトルは,いずれも小児に比較して成人で低周波域にシフトしていた。2.IIA期ならびに成人期のいずれにおいても,規定動作の違いにかかわらず,各筋のエネルギーパワースペクトルに左右差および筋差は認められなかった。