抄録
好気的条件下で生活する生物は酸素呼吸をして主なエネルギーを得ているが,これに伴ない生じる活性酸素の一種であるスーパーオキシドアニオン(02-)は,活性酸素生成の最上流に位置しており, D N A 損傷や膜変性, 過酸化脂質蓄積などに重要な関与をすると言われている。我々は,好気的条件下での適応に伴なう活性酸素代謝の変化を解明する目的で,各種培養条件における菌の増殖とSOD活性の誘導を調べ,さらに,その時の金属要求性に関しても検討した。その結果,本菌を好気的条件下で培養すると,SOD活性の誘導とともに菌の増殖が認められた。しかしながら金属キレート培地中ではSOD活性の誘導は認められなかった。さらに,金属キレート培地中での菌の増殖およびSOD活性の誘導に対して,鉄,マンガンの要求性を強く示し,その程度はそれぞれの濃度によって異なっていたが,鉄とマンガンを同時に供給したものが最も強くSOD活性と増殖を誘導した。
以上の結果より,本菌は好気的条件下では,SOD活性の誘導と増殖の問に密接な関係があることが推察された。また,この時に金属の存在は必須のものである事が明らかになった。