小児歯科学雑誌
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水酸化カルシウム・ユージノール合剤の幼犬乳歯歯髄への影響について
- 初期の経過所見-
信家 弘士三宅 雄次郎城所 繁長坂 信夫
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1989 年 27 巻 4 号 p. 915-921

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抄録
我々は歯科臨床で広く応用され,防腐・鎮痛作用を有したユージノールに注目し,基剤としてポリエチレングリコールを添加した水酸化カルシウム・ユージノール合剤を試作して,幼犬の乳歯生活歯髄切断処置に用い初期の治癒経過を病理組織学的に検討した。
材料および方法:幼犬4頭を用い,通法に従って乳歯生活歯髄切断処置を行い,糊剤には試作合剤(水酸化カルシウム:1.0g,ユージノール:0.8ml,ポリエチレングリコール4000:1.2ml)を用いた。被験歯は脱灰後セロイジン包埋し,ヘマトキシリン・エオジン染色を施した病理組織標本を作製した。各期間の症例は,術後3日が8例,術後7日が21例,合計29例である。
結果:1.術後3日の病理像では,切断部の合剤に接した歯髄は,広範囲に変性・壊死が生じ,無構造な状態となっていた。またこの壊死層直下では,ほぼ均一でヘマトキシリンにやや濃染された層が全面に認められ,固有歯髄と分界していた。固有歯髄では,特に著しい変化は認められなかった。
2.術後7日の病理像では,壊死層は萎縮しまたヘマトキシリン濃染層ではさらに染色性が増し,細胞の変性が著しく,固有歯髄とはより明確に分界していた。固有歯髄では,ユージノールの影響と思われる円形細胞浸潤や空胞・萎縮・変性を伴った軽度の慢性炎症像を呈していた。庇蓋硬組織はまだ形成されていなかった。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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