抄録
切削エナメル質に対するレジンの接着性について,切削深さとエッチング時間の影響を観察した。
資料としては,冷凍保存した牛下顎幼若永久切歯75歯を用いた。エッチングは,40%正燐酸ゼリーを使用し,エッチング時間は,0,10,20,30及び60秒とし,30秒間スプレー水洗を行った。レジンは,クラレ社製Photo BondとPhoto Clearfil Aを使用した。同一歯牙のエナメル質表層と深層の両者について剪断接着試験を行い接着強さを測定するとともに, 剪断接着試験後のエナメル質面とレジン面をS E M で観察し, 下記の結論を得た。
1)接着強さが最も高かったのは,エナメル質表層では,エッチング時間が20秒(35.25±6.60MPa),深層では30秒(40.15±6.59MPa)の場合であった。
2)エナメル質表層並びに深層ともに,エッチングなし群とすべてのエッチング時間に対するエッチング群間で接着強さに有意差がみられ,エッチング群が高かった。
3)エッチング群について,エナメル質を表層並びに深層別にみると,エッチング時間別には接着強さに有意差はみられなかった。
4)エッチング群については,エナメル質の小柱構造並びにレジンタグが明瞭でない症例とエナメル質面にレジンが広範囲に亘って残存接着していた症例で,高い接着強さを示す傾向がみられた。