抄録
初診時に歯科診療に対する適応性が低く,取り扱いが困難な心身障害児に対し,初診時から行動療法トレーニングを実施し,歯科治療後においても継続的にトレーニングを行い,その臨床効果について検討した。調査対象は愛知学院大学歯学部附属病院小児歯科外来を訪れた心身障害児150名である。
1)初診時に取り扱いが困難であった心身障害児に治療開始以前にトレーニングを行うことにより48.7%の患児が外来での一般的な治療が可能であった。
2)初診時の適応性が「やや不適応」であった患児の79.0%が笑気吸入鎮静法を含めれば外来での有意識下歯科治療が可能であった。同様に「不適応」患児では46.0%が外来での有意識下歯科治療が可能であった。
3)継続的なトレーニングを行うことにより歯科診療時の適応性が「適応」に変化した患児は60.7%であった。
4)継続的なトレーニングは笑気吸入鎮静法下の歯科治療を受けた患児の95.3%に臨床的な有効性が認められた。また全身麻酔下の歯科治療を受けた患児の76.8%,一般的な歯科治療を受けた患児の71.2%に臨床的な有効性が認められた。
5)歯科診療への適応までの平均来院回数は,一般的な歯科治療が5.9回,笑気吸入鎮静法下の歯科治療が4.1回となっていた。また,全身麻酔下の歯科治療では初診から14.9回,歯科治療後では10.6回となっていた。