抄録
Crouzon症候群は,頭蓋縫合早期癒合,顔面中央形成不全および眼球突出の3徴候を呈する疾患である.今回,私たちは5歳6か月女児のCrouzon症候群に遭遇したので,全身的および歯科的所見について報告する.
1)母26歳の第一子,妊娠34週で出産し,生下時体重2,080gであった.
2)家族は両親と妹1人で,ともに健康で特記するような異常を認めない.
3)患児に次の所見を得た.
(1)難聴である.
(2)頭髪,皮膚には,異常は認められず,眼球は正常であるが,やや突出感が認められた.
(3)顔面中央部の発育が不全で,鷲鼻を呈し,上唇は短い.
(4)臨床検査の結果,血清PおよびAIPが高値を示し,骨疾患を思わせる様相を呈している.その他,血液検査,尿検査,染色体検査など,特に異常値を示すものはない.
(5) 頭部エックス線規格写真によると, 頭蓋骨は塔状を示し, 指状圧痕がみられる.上顎の劣成長と下顎の前下方への発育がみられ,上顔面は発育不良で下顔面高は高かった.また,下顎骨体の変形もみられた.
(6)乳歯は20歯を保有し,咬合状態は,前歯部の開咬,臼歯部の下顎近心偏位,下顎歯列弓の狭窄を認め,高口蓋を呈していた.
(7)オルソパントモ型およびデンタルエックス線写真によると,永久歯胚は第二大臼歯までの全てが認められ,歯の石灰化年齢は約5歳4か月と判定した.