小児歯科学雑誌
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28 巻 , 1 号
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  • 二木 昌人, 廣田 和子, 市野 浩司, 中田 稔
    1990 年 28 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    第1報で報告したベベル付与バーの寸法・形態等に改良を加え,レジン充填の際の窩縁へのラウンドベベルおよびストレートベベルの付与がより均一で確実に行えるように工夫した.
    今回は,実験条件を可及的に均一にするために,便宜的に抜去乳前歯の唇側面にラウンドベベル,ストレートベベル,バットジョイントの3種類の窩縁形態を有する窩洞を形成した.そして光重合型臼歯修復用コンポジットレジンを充填後,臼歯部の咬合・咀嚼による外力を想定して,衝突磨耗試験機を用いた衝突試験を行った.次に色素浸透試験によって,コソポジットレジンの辺縁封鎖性に与える衝突試験の影響について窩縁形態ごとに調査した.また,衝突試験前後の試料のレプリカを電子顕微鏡レベルで観察し,辺縁破折の有無・様相等について調べた.
    その結果,衝突試験後の辺縁封鎖性については窩縁形態によって有意差を認め,良好な順にラウンドベベル,ストレートベベル,バットジョイントとなった.また,走査電子顕微鏡による観察では,コンポジットレジンと歯質との境界の明瞭化のみを認め,明らかな辺縁破折やギャップの所見はいずれの窩縁形態においても見られなかった.したがって,辺縁封鎖性が劣化している試料については,辺縁破折が起こる前にすでに外力によってコポジットレジンと歯質との間に微小なギャップが生じているものと推測された.
  • 森主 宜延, 北見 ひろ子, 福満 和子
    1990 年 28 巻 1 号 p. 11-25
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,自閉症ならびに自閉的傾向児の食生活と健常児の食生活との比較により,自閉症ならびに自閉的傾向児の食生活習慣(主に偏食),栄養学的そして歯科保健学的問題に関する指導の必要性を検討することである.
    自閉症ならびに自閉的傾向児の研究対象者は,男児54名,女児8名,合計62名である.
    食生活アンケートと食事記録により得られた料から,偏食ならびに嗜好性,栄養(主にエネルギー)の充足率,食形態(硬度),おやつの摂取状況,そして砂糖摂取状況と齲蝕罹患状況との関係について検討した.得られた研究結果は次のようである.
    1.嗜好性について,自閉症児が好む食品は魚肉類であり,嫌いな食品は野菜であった.この傾向は健常児と同様であった.自閉症児がおやつで好む食品は,ジュース類と牛乳であった.
    2.CLAC IIに基づく自閉症児の偏食に関する評価から,偏食の有無による摂取量エネルギーに有意差が認められた食品群は,牛乳と油脂類であった.また,偏食の有無と固執性間に因果律は成立しなかった.
    3.自閉症児と健常児との比較から,栄養(エネルギー)の充足率に有意差を認めなかった.食品群別充足率において,自閉症児は健常児と比較し魚肉類で有意に高く野菜類ならびに乳製品で低値を示した.年齢に基づく野菜の充足率の変化から,自閉症児は健常児と比較し,7歳児で両者の差が大きくなり,自閉症児の充足率は低値を示した.
    4.食形態において,自閉症児は健常児と比較し,硬度の高い食品を摂取していた.
    5.おやつの摂取点における自閉症児と健常児との比較から,総摂取点ならびに食品群別摂取点は,両者間に有意の差を認めなかった.また,おやつの摂取習慣(摂取回数,摂取時の規則性,摂取量)において,健常児が5歳より摂取習慣が歯科保健学的に良化したのに対して,自閉症児では悪化した.
    6.齲蝕罹患状況と砂糖摂取状況との関係は,自閉症児ならびに健常児とも高い相関を示した.しかし,摂取時と含糖食品の形態(飲料とその他)において自閉症児と健常児間に差が認められ,自閉症児は,食事時に含糖飲料を摂取する者が多く,健常児は,含糖飲料を間食時に摂取する者が多かった.
    7.自閉症児の食生活は,集団を対象とした場合,栄養学的に偏りが見られるものの,食生活指導の絶対的必要性は認められず,歯科保健学的には好ましい食生活状況を示していた.
  • 細矢 由美子, 中村 則子, 有冨 匡子, 品川 浩実, 後藤 讓治
    1990 年 28 巻 1 号 p. 26-39
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    牛幼若永久歯切削エナメル質に対するレジンの接着性について,切削深さとエッチング時間の影響を観察した.
    37%正燐酸ゼリーで,0,10,20,30及び60秒間エッチングを行った.レジンは,3M社製Dual Cured Scotch BondとSiluxを使用した.同一歯牙のエナメル質表層と深層の両者について勇断接着試験を行い,接着強さを測定した.また,勇断接着試験後の資料をSEMで観察した.得られた結果をPhoto Bond併用時におけるPhoto Clearfil Aの結果と比較した.
    1)接着強さが最も高かったのは,エナメル質表層並びに深層共に,エッチング時間が60秒の場合であった.
    2)同じエッチング時間における表層と深層間の接着強さに有意差はみられなかった.
    3)表層並びに深層共に,すべてのエッチング時間群間とエッチングなし群間の接着強さに有意差がみられ,エッチング群が高く,60秒と20秒及び30秒群間の接着強さに有意差がみられ,60秒の場合が高かった.深層のみについて,10秒と20秒群間にも有意差がみられ,10秒の場合が高かった.
    4)エナメル質にレジンが広範囲に残存接着していた症例で,高い接着強さを示す傾向がみられた.
    5)SiluxとPhoto Clearfil A間の接着強さは,表層と深層の両者で,10秒と60秒についてはSiluxが有意に高く,エッチングなしの場合は,Photo Clearfil Aが有意に高かった.
  • 小泉 達哉
    1990 年 28 巻 1 号 p. 40-56
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    エナメル質の齲蝕感受性は,萌出直後で一番高く,以後増齢的に低下し,これが萌出後成熟によるものであることは広く知られている.しかし,そのメカニズムが解明されているわけではない.そこでそのメカニズムを解明する一手掛かりとして,成熟過程(再石灰化過程)において軽度の脱灰が繰り返し組み込まれた場合どのような影響を与えるかを合成のカーボネート含有水酸化アパタイト粉末とヒトエナメル質を用いて検討を行った.
    その結果,粉末実験においては,再石灰化の過程にごく軽度の脱灰を頻回に組み込むことにより,サイズの減少を少なく抑えることができ,かつ結晶性を向上させることが認められた.また,ヒトエナメル質の実験においては,1回当たり30秒という短時間の脱灰を再石灰化過程に繰り返し組み込んだ部分において,実質欠損等を起こすことなく,結晶性の向上とそれにともなう耐酸性の向上が認められた.
    以上のことよりエナメル質の成熟過程にごく軽度の脱灰が繰り返し組み込まれることにより,エナメル質表層での結晶性が向上し,それにともない耐酸性も向上する.つまりエナメル質の無機相における萌出後成熟(post-eruptive maturation)に大きく関与していることが示唆された.
  • 渡部 茂, 大西 峰子, 河野 英司, 新川 斉, 五十嵐 清治
    1990 年 28 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の唾液クリアランス能に関与している唾液分泌量について,生理学的な背景を得るために,5歳児,男女各20名の安静時唾液分泌量と,クエン酸刺激による最大唾液分泌量を測定した.
    クエン酸は1%(52mmol/l),3%(156mmol/l),5%(260mmol/l)溶液を用い,直径2.5mmのチューブにて,流速5ml/minで1分間口腔内を刺激し分泌された唾液量を測定した.安静時分泌量は首をやや前傾させ,口を軽く開け,舌,口唇を動かすことを禁じたまま5分間採取し,1分間の分泌量を求めた.
    その結果,平均の安静時唾液分泌量は,0.24±0.13ml/minで,1%クエン酸による分泌量は2.34±1.11ml/min,3%クエン酸では3.18±1.03ml/min,5%クエン酸では4.25±1.38ml/minであった.これら全ての値に男女間の有意差は認められなかった.5%クエン酸による分泌量を100%とした場合,安静時唾液分泌量は約5%,1%クエン酸による分泌量は約57%,3%では約80%を示していた.これは同様の実験で得られたBecksら,Watanabeらの成人の値と比較すると,ほぼ等しい割合を示していた.また,安静時唾液分泌量は成人の分泌量の約75%,各クエン酸溶液による分泌量は成人の約50~60%の範囲にあった.今回の結果は乳歯列での唾液クリアランス能を成人と比較して考えるうえで重要な示唆を与えるものと思われた.
  • 藤居 明範
    1990 年 28 巻 1 号 p. 64-74
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    エナメル質齲蝕は,口腔内細菌が産生する様々な有機酸によって起こる.これら有機酸の中でも乳酸と酢酸は,産生量も多くエナメル質翻蝕を考える上で重要である.ことに実際の歯垢中では,これら有機酸が共存して歯質の脱灰を起こすものと考えられる.そこで本実験では合成アパタイト粉末及びヒトエナメル質を用いて乳酸と,酢酸との混合溶液による脱灰実験を行った.脱灰溶液は,乳酸単独溶液,乳酸と酢酸との混合比が3:1,1:1, 1:3の溶液,酢酸単独溶液とし,pHを4.0,4.5,5.0,5.5,6.0に調整し,酸の濃度はすべて500mMとした.そしてこれら酸の混合比とpHの違いによる脱灰量,脱灰様相の変化を検討した.アパタイト粉末を用いた脱灰実験の結果より,混合溶液では,乳酸と酢酸とを混合したものが単独の溶液よりも脱灰量を多く認め,単独溶液ではpHが低い場合には乳酸の脱灰量が多く,pHが高くなると酢酸の脱灰量が多く認められた.ヒトエナメル質を用いた脱灰実験では,乳酸の割合が多いほど,またpHが低いほど脱灰深度が大きく,エナメル質表面も深くまで脱灰消失を受けていた.高いpH域においては,酢酸溶液は,乳酸溶液と同程度の脱灰深度を示した.
    以上の結果より,エナメル質脱灰には単にpHだけでなく,乳酸,酢酸の混合比の違いによっても脱灰量と脱灰様相が異なることが明かとなった.
  • 細矢 由美子, 有冨 匡子, 城臺 維子, 品川 浩実, 後藤 讓治
    1990 年 28 巻 1 号 p. 75-89
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    フッ化ジアンミン銀の歯髄反応について観察する事を目的に研究を行った.成犬歯牙103歯に対し,エアータービンに装着したカーバイトバーで注水下に象牙質窩洞を形成後,38%フッ化ジアンミン銀(サホライド)を塗布した群を実験群,窩洞に何も塗布しない群をコントロール群とした.両群共に,窩洞には何ら充填処置を行わず,窩洞を開放状態で放置した.実験日数は,3日,7日及び30日とした.
    歯牙を中性フォルマリン液で固定後脱灰し,ツェロイジンで包埋後,通法に従って薄切し,連続切片標本としてヘマトキシリン・エオジン複染色を施し,顕微鏡下に観察した.
    その結果,
    1)実験群並びにコントロール群共に,歯髄固有細胞及び造歯細胞に種々な病理所見が観察された.
    2)いずれの実験日数においても,実験群とコントロール群間の病理成績に,統計学的有意差はみられなかった.
    3)フッ化ジアンミン銀中の銀粒子の象牙細管及び歯髄中への侵入程度と病理所見及び病理成績との間には,関連性は認められなかった.4)38%フッ化ジアンミン銀は,歯髄に対し何ら保護的効果を示さなかった.
  • 野原 義弘
    1990 年 28 巻 1 号 p. 90-100
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    齲蝕感受性の高い小窩裂溝部の予防填塞は従来より, 酸処理法を前処理とするレジンシーラントが広く応用され,その齲蝕予防効果も一応評価されてきている.しかし,反面,酸処理操作上填塞範囲を越えて余剰な酸処理となることは避け難く,エナメル質表層の質的性状および萌出後成熟に影響を及ぼす可能性が考えられる.本実験ではこの様な観点から特に酸処理を必要とせず,フッ素イオンを溶出するといわれるグラスアイナノマーセメント系シーラントにより,填塞された小窩裂溝部エナメル質の質的性状変化について検討し,以下の結果を得た.
    1)本シーラント填塞下部,周囲部エナメル質ともに,シーラントより溶出するフッ素イオンの浸透を約20~30μmの深さまで認めた.
    2)本シーラント填塞下部,周囲部エナメル質ともに,耐酸性の向上が認められたが,この傾向はシーラント周囲部エナメル質により著明に認められた.
    3)本シーラント填寒下部エナメル質表層の結晶性は,c軸方向には低下する傾向がみられたが.a軸方向にはやや向上の傾向がみられた.シーラント周囲部エナメル質表層の結晶性は,a軸,c軸方向ともに向上する傾向がみられた.以上のことより, グラスアイオノマーセメント系シーラントはシーラント填塞下部および周囲部エナメル質の歯質強化をもたらすことが示唆された.
  • 菊地 賢司, 三木 真弓, 宮本 幸子, 有田 憲司, 西野 瑞穂
    1990 年 28 巻 1 号 p. 101-107
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    咀嚼の低下が顎下腺の上皮成長因子(EGF)活性に及ぼす影響ならびにその機序について検討した.実験には離乳直後の雄マウスを用い,固形食あるいは同一成分の練食で飼育し,8週齢時のEGF活性について比較を行った.EGF活性は,ヒト乳歯歯根吸収組織由来細胞の増殖促進能を指標として計測した.その結果,顎下腺から抽出した蛋白質中のEGF活性は,練食群で有意に低い値を示した.そこで,この機序について追求する目的で,まず両群の顎下腺の構成細胞の形態を光学顕微鏡で観察し比較したところ,練食群では,EGFを産生する顆粒腺房細胞の数が少ないことが認められた.次に,顎下腺抽出物中の蛋白質の成分分析を.SDSポリアクリルアミドゲル雷気泳動を用いて行ったところ,両群間で構成蛋白質成分に差は認められなかった.
    これらの結果から,咀嚼の低下は,顎下腺の発達の低下をひきおこし,EGFを産生する顆粒腺房細胞の数の低下とそれに伴うEGF含有量の低下をきたすことが示唆された.
  • 平井 志都子
    1990 年 28 巻 1 号 p. 108-132
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の成長発達に伴う顎運動の推移と,滑走運動を規定する要因を知るために,Hellmanの咬合発育段階IIA,IIIA,IVAの正常咬合者各11名,計33名を対象に,下顎切歯運動路ならびに滑走運動を誘導する上顎歯の咬合小面の傾斜角度について検討した結果,以下の結論を得た.
    1)咬合発育段階の進行に伴い,下顎運動範囲は側方,前方,下方ならびに後方へ拡大し,限界位のばらつきは減少した.
    2)咬合発育段階の進行に伴い,滑走運動路の傾斜角は急になる傾向を示した.
    3)側方滑走運動を誘導する上顎歯は,作業側では各咬合発育段階とも犬歯の頻度が最も高く,平衡側についてはIIAでは第2 乳臼歯,IIIAでは第2 乳臼歯および第1 大臼歯,IVAでは第1大臼歯の頻度が最も高かった.前方滑走運動を誘導する上顎歯は,各咬合発育段階とも中切歯の頻度が最も高かった.
    4)咬合発育段階の進行に伴い,滑走運動を誘導する上顎歯の咬合小面の傾斜角度は急傾斜になる傾向を示した.
    5)咬合発育段階の進行に伴う側方滑走運動路の傾斜角度の変化の左右差は,側方滑走運動誘導歯の咬合小面の傾斜角度の変化の左右差によることが示された.
    6)側方滑走運動路の傾斜角度と側方滑走運動誘導歯の咬合小面の傾斜角度との間に,咬頭嵌合位から3,4mmの位置で強い正の相関が認められた.
  • 前田 隆, 今井 麗, 樋口 直人, 齋藤 健志, 赤坂 守人
    1990 年 28 巻 1 号 p. 133-142
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 3 歳から5 歳の小児の摂食状態と咬合力ならびに咀嚼能力との関係を調査することであった.
    3歳から5歳の健常で,正常咬合を有し,無齲蝕の小児69名を対象にした.摂食状態の調査にあたっては,毎日昼食を与えている保母にアンケート調査を行った.
    結果は以下に示す通りである.
    1.「食べるものをのみ込まず,口の中にためていることがよくある」者と「偏食が多い」者は咬合力,咀嚼能力はともに低く咬合力は有意な差を認めた.
    2.咬合力,咀嚼能力が低い者は,特定食品の咀嚼低下度指数は高かった.
    3.「丸のみしがちである」「軟らかいものを食べたがる」「偏食が多い」者は,特定食品の咀嚼低下度指数は高い傾向にあった.
  • 阿部 慶子, 正富 洋子, 大嶋 隆, 祖父江 鎮雄
    1990 年 28 巻 1 号 p. 143-152
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    低リン血症性ビタミンD 抵抗性くる病(以下HVDRRと略) に罹患している患児(男児1,女児2)から得た乳歯の病理組織学的特徴を光学顕微鏡及びコンタクトマイクロラジオグラフを用いて診査した.HVDRR患者のエナメル質には,病理組織学的異常は認められなかった.一方,HVDRR患者の象牙質には,球間象牙質の多発,幅広い象牙前質,管状欠損等の異常が認められた.また,咬耗のあるHVDRR罹患歯の歯髄側には,修復象牙質の形成が認められた.
  • 大西 敏雄, 武井 謙司, 長澤 篤, 関 みつ子, 中島 一郎, 高梨 登, 小倉 孝夫, 前田 隆秀, 赤坂 守人
    1990 年 28 巻 1 号 p. 153-159
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    脳性麻痺者には四肢の運動障害と同時に,言語活動など口腔領域の機能障害が見られる.特に摂食という生命維持のための基本的な機能として咀嚼機能を知ることは重要である.
    そこで,Spastic型脳性麻痺者の咀嚼筋活動を健常者を対照に検討することを目的に,積分値で表わされる咀嚼筋活動量をもって観察した.被験者は,合併症をもたないSpastic型脳性麻痺者10名および健常者10名を対象に,物性の異なる4種類の食品を咀嚼試料にして,咀嚼運動時のリズムおよび筋活動量について検討した結果,以下の結論を得た.
    1.咀嚼リズムであるDuration,Cycleは,Spastic型脳性麻痺者が健常者よりも,すべての被検食品において有意に時間が長かった.
    2.咀嚼リズムの変動係数は,Spastic型脳性麻痺者,健常者ともりんごが最も小さかった.
    3.筋活動量は,Spastic型脳性麻痺者が健常者よりも,すべての被検食品において有意に高い値であった.
    4.Spastic型脳性麻痺者も健常者も,各被検食品の筋活動量に有意な差が見られた.
  • 緒方 哲朗, 中田 稔
    1990 年 28 巻 1 号 p. 160-171
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    我々は,小児期における咬合機能の発育過程を知る方法として咬合接触面に注目した.そして小児の咬頭嵌合位における咬合接触面数・接触面積・接触面に加わる咬合力の大きさを解析するため,面圧測定シート「オクルーザルプレスケール」(富士フィルム社製)と画像解析装置を用いた咬合接触面測定システムを講築し,その有効性について検討した.
    その結果,次の測定条件が測定精度を上げるうえで有効であることがわかった.(1) 計測は電源投入後60分以上経過して行う,(2) 光源照射部はクロス型照明装置を透過光として使用する,(3) 資料は可及的に画面の一定の位置(中央部E区画内)に置く,(4) 濃度一圧力のキャリブレーションには, 3次の重回帰方程式が有効である, (5) 資料の採得・保存・計測の条件に充分に留意する,などである.
    以上の測定条件下で,同一資料の複数回測定における変動係数は,咬合接触面積,咬合力の大きさ共に0.002未満になった.
    次に,小児3名・成人3名で咬頭嵌合位における最大咬みしめ時の咬合接触面積と咬合力の大きさについて繰り返し測定を行い,被験者内変動係数を調べた.その結果,咬合接触面積と咬合力の大きさ,小児と成人共に変動係数は0.08未満であった.
    以上のことから,小児の咬合接触面を解析するにあたり本測定システムの有効性が示された.
  • 勝山 博文, 松本 ゆかり, 大森 郁朗
    1990 年 28 巻 1 号 p. 172-179
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    重症心身障害者に生じた唾石が無症状のまま経過し,顎下腺開口部付近で大きく成長していたものが,徒手的に摘出された症例に遭遇した.この唾石について,実体顕微鏡, 走査電子顕微鏡( 以下, SEMと略す) による表面観察を行った.また, 長軸方向に唾石を切断した後,切断面の実体顕微鏡観察,X線写真観察,SEM観察を行った.さらに,X線マイクロアナライザー(以下,XMAと略す)により,切断面の元素分析を行い,以下の結果を得た.
    1)唾石の形状は棍棒状をなし,大きさは最大長径22mm,最大幅径7mmであった.乾燥重量は0.627gであった.
    2)SEMでの表面観察により,隆起物表面に,多数の小孔を伴う多孔性の構造が観察された.
    3)切断面の実体顕微鏡観察では,遠心端から約1/3の位置に核が認められ,その周囲には比較的均質な層状構造部が観察された.最外層では多数の類円形の構造物が観察された.
    4)X線写真による観察では切断面での観察所見に一致して,核部,層状構造部,最外層部が観察された.
    5)切断面のSEM観察により,層状構造部では,比較的規則的な層状構造が観察されたのに対して,最外層部での層状構造は,規則的ではなくウロコ状であった.
    6)XMAによる元素分析の結果,CaとPが多く検出され,線分析の結果から,主な無機成分がリン酸カルシウムであることが示唆された.
  • 船越 禧征, 池本 博之, 蕭 思郁, 深尾 正, 平木 ますみ, 稗田 豊治
    1990 年 28 巻 1 号 p. 180-185
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    兵庫県立こども病院歯科において日帰り手術棟を利用して,1985年4月から1989年3月までの4年間に99人の歯科外来麻酔を行ったが,重大な合併症はなかった.歯科処置の内容は一般歯科処置77人,埋伏過剰歯抜歯10人,粘液嚢胞摘出術7人,舌小帯延長術3人,上唇小帯切除術2人であった.外来麻酔を行った理由は精神障害児58人,口腔外科手術のため全身麻酔を必要とした22人,低年齢児のため歯科治療に非協力な19人であった.年齢は乳歯列期53人,混合歯列期39人,永久歯列期7人であった.外来麻酔は母子分離による患児と家族のストレスの減少,入院による院内交叉感染がないなどの利点がある.外来麻酔を行う際には術者の便利さのために選択するのではなく,本方法を用いることが患児の精神的,身体的負担を軽減し歯科治療が無理なく,しかも安全に行いうる場合のみ実施するようにしなければならない.外来麻酔が安全にして,円滑に運ぶためには病院のもつあらゆる機能を最大限にいかし,同時に院内各科(麻酔科,放射線科,小児科,臨床検査科など)の協力が必要最低限の条件である.
  • 二木 寿子, 井手 有三, 中田 稔
    1990 年 28 巻 1 号 p. 186-198
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Craniometaphyseal dysplasia(Pyle 氏病)は,遺伝的に現れるきわめてまれな先天性骨異形成症である.頭蓋底における骨の硬化と肥大,管状骨の骨幹端の肥大や骨皮質の非薄化を主徴とし,特徴的な顔貌形成,含気空洞の狭窄による鼻呼吸障害,脳神経圧迫による難聴,視力障害,顔面神経麻痺などの様々な症状を呈す.一般に,歯の形成は正常であると言われているが,今回著者らが遭遇した初診時7歳2カ月の女児では,歯科的にも興味深い所見が認められたので,ここに報告する.
    1)顔面,上下顎骨における骨の肥厚および硬化像をみとめた.
    2)鎖骨の近位端,中手骨,手指骨の一部と,橈骨遠位端において軽度の棍棒様の肥大,変形を認めた.
    3)頭蓋基底の深さ,上下顎骨の深さおよび高さが著明に大きく,特に上顎骨においてその傾向が強かった.
    4)咬合状態は過蓋咬合で,下顎歯列に対し上顎歯列が著明に大きく,乳臼歯部においても両側性頬側交叉咬合を呈していた.
    5)萌出歯は全て乳歯で,X線写真による診査では,暦齢と比較して生理的歯根吸収の遅れを認めた.また,永久歯胚の発育にも1年半から2年の遅延を認めた.歯数においては,上顎右側第1大臼歯の欠如を認めた.現在13歳4カ月で,全身状態は良好である.永久側方歯群は,歯根形成がかなり進んでいるにも関わらず,埋伏の可能性が高い.
  • 園本 美恵, 河原 茂, 嘉藤 幹夫, 大東 道治, 田中 利一, 稗田 豊治
    1990 年 28 巻 1 号 p. 199-205
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Crouzon症候群は,頭蓋縫合早期癒合,顔面中央形成不全および眼球突出の3徴候を呈する疾患である.今回,私たちは5歳6か月女児のCrouzon症候群に遭遇したので,全身的および歯科的所見について報告する.
    1)母26歳の第一子,妊娠34週で出産し,生下時体重2,080gであった.
    2)家族は両親と妹1人で,ともに健康で特記するような異常を認めない.
    3)患児に次の所見を得た.
    (1)難聴である.
    (2)頭髪,皮膚には,異常は認められず,眼球は正常であるが,やや突出感が認められた.
    (3)顔面中央部の発育が不全で,鷲鼻を呈し,上唇は短い.
    (4)臨床検査の結果,血清PおよびAIPが高値を示し,骨疾患を思わせる様相を呈している.その他,血液検査,尿検査,染色体検査など,特に異常値を示すものはない.
    (5) 頭部エックス線規格写真によると, 頭蓋骨は塔状を示し, 指状圧痕がみられる.上顎の劣成長と下顎の前下方への発育がみられ,上顔面は発育不良で下顔面高は高かった.また,下顎骨体の変形もみられた.
    (6)乳歯は20歯を保有し,咬合状態は,前歯部の開咬,臼歯部の下顎近心偏位,下顎歯列弓の狭窄を認め,高口蓋を呈していた.
    (7)オルソパントモ型およびデンタルエックス線写真によると,永久歯胚は第二大臼歯までの全てが認められ,歯の石灰化年齢は約5歳4か月と判定した.
  • 宮沢 裕夫, 小塙 衛, 今西 孝博, 津田 真, 廣瀬 伊佐夫
    1990 年 28 巻 1 号 p. 206-214
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは,本学小児歯科外来を受診した著しい非協力児23例と,比較的侵襲の大きい外科処置を施術した7例の歯科治療にFlunitrazepamによる静脈内鎮静法を応用し,患児の協力状態と本法との関連,体動と処置内容,術中,術後の状況,および不快事項等について観察を行った.その結果以下の結論を得た.
    1)良好な鎮静状態を得るためには,成人量に比較し,平均薬剤投与量は2~4倍が必要であった.
    2)平均投与量は低年齢児の齲蝕処置群に高く,平均年齢の高い外科処置群では,齲蝕処置群に比べ少ない量で効果的な鎮静効果が得られた.
    3)歯科処置への協力状態,理解度が投与量の多少に関連していることが示唆された.
    4)術中の循環動態,呼吸状態の不良を呈する所見は認められず,十分な術後管理を行うことにより,特に問題となる不快事項も認められなかった.
    5)術中,術後における不快な記憶は残存せず,非協力児のBehavior Controlには有効であることが示唆された.
  • 田村 康夫, 篠田 圭司, 真部 滋記, 堀口 浩, 岡本 圭一, 岡本 義正
    1990 年 28 巻 1 号 p. 215-223
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本学小児歯科をリコール中に顎関節症と診断された小児について発症前の咬合を含め,顎運動,筋活動の各変化を検討した.
    患児は12歳3カ月の女子で右側顎関節部疼痛および開口障害を主訴として来院した.患児は3歳から本学小児歯科を受診し,齲蝕治療後は定期的な検診を受けていた.それまで,顎関節部の疼痛や開口障害を経験したことはなかった.
    発症時,早期接触は上下右側第1小臼歯,第1大臼歯に認められ,第2大臼歯は上下顎とも左側が萌出開始していた.筋と顎関節のrelaxaticnを図る目的でバイトプレーンを装着した結果疼痛は次第に軽減し,早期接触部位は主に左側上下第1大臼歯間に強く認められていた.同部の咬合調整と咬合再構成を行った結果, 疼痛は消失し, 開口距離は50mmまで回復した.また顎運動,筋電図所見にも著明な改善が認められた.
    本症例の顎関節症発症の原因としては,左側第2大臼歯の萌出による咬合変化と左側第1大臼歯の早期接触が最も疑われた.
  • 三ッ井 健, 菊地 賢司, 鎌田 浩二, 有田 憲司, 西野 瑞穂
    1990 年 28 巻 1 号 p. 224-234
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    若年発症顎関節症の原因を知る目的で,成人顎関節症患者21人(20.3 歳~34.8歳,平均年齢29.5歳,男性6人,女性15人)のうち初発症状が10代に認められた者(A群8人)と小児期には既往がなく成人になってはじめて発症した者(B群13人)について,両群の形態的,機能的特徴を,口腔内診査,側貌頭部X線規格写真,および歯列模型によって比較検討した.
    また,顎関節症の臨床的対応について,10代で初発症状がみられ27歳で明らかな顎関節症を示した症例および顎関節雑音を示す11歳児の症例によって示した.
    結果は次の通りであった.
    1)A群,B群ともに咬合の異常と側方滑走運動時の適切なガイドの欠如が高頻度に認められた.
    2)A群ではB群に比べて明らかに下顎枝の短小と下顎角の開大が認められた.2症例の治療経過を通じ,スプリント療法と咬合再構成との併用療法の有効性を示した.
  • 1990 年 28 巻 1 号 p. 235-301
    発行日: 1990/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
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