抄録
Craniometaphyseal dysplasia(Pyle 氏病)は,遺伝的に現れるきわめてまれな先天性骨異形成症である.頭蓋底における骨の硬化と肥大,管状骨の骨幹端の肥大や骨皮質の非薄化を主徴とし,特徴的な顔貌形成,含気空洞の狭窄による鼻呼吸障害,脳神経圧迫による難聴,視力障害,顔面神経麻痺などの様々な症状を呈す.一般に,歯の形成は正常であると言われているが,今回著者らが遭遇した初診時7歳2カ月の女児では,歯科的にも興味深い所見が認められたので,ここに報告する.
1)顔面,上下顎骨における骨の肥厚および硬化像をみとめた.
2)鎖骨の近位端,中手骨,手指骨の一部と,橈骨遠位端において軽度の棍棒様の肥大,変形を認めた.
3)頭蓋基底の深さ,上下顎骨の深さおよび高さが著明に大きく,特に上顎骨においてその傾向が強かった.
4)咬合状態は過蓋咬合で,下顎歯列に対し上顎歯列が著明に大きく,乳臼歯部においても両側性頬側交叉咬合を呈していた.
5)萌出歯は全て乳歯で,X線写真による診査では,暦齢と比較して生理的歯根吸収の遅れを認めた.また,永久歯胚の発育にも1年半から2年の遅延を認めた.歯数においては,上顎右側第1大臼歯の欠如を認めた.現在13歳4カ月で,全身状態は良好である.永久側方歯群は,歯根形成がかなり進んでいるにも関わらず,埋伏の可能性が高い.