小児歯科学雑誌
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第一大臼歯萌出前後における乳歯咬合小面の三次元的推移に関する研究
竹中 稔山崎 要一緒方 哲朗小田 博早崎 治明阿部 和久中田 稔
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1990 年 28 巻 2 号 p. 313-326

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抄録
小児の顎口腔機能の発達過程を解明する目的で, 咬合機能の軌跡であると考えられる咬合小面に着目し,その立体的形態変化の様相を明らかにするために,歯牙三次元形態測定解析システムを開発した.このシステムは,咬合面形態の三次元座標値を入力するための歯牙三次元座標測定システムと,入力された座標値をもとに,咬合面形態の三次元的解析を行うための入力座標解析システムより構成され,形状測定用基準ブロックを使った精度試験の結果,高い測定精度が証明された.
本システムを用いて,第一大臼歯萌出前後の経年歯列石膏模型が得られた小児11名(男児7名,女児4名)の乳犬歯と第二乳臼歯咬合小面の形態変化を三次元的に解析した.その結果,第一大臼歯萌出前では,上下第二乳臼歯とも,主として機能咬頭の各歯面に咬合小面が分布していたが,萌出後はさらに非機能咬頭の歯面にも多数出現していたため,第二乳臼歯部における咬合小面数は,上下顎のいずれも統計学的に有意に増加していた.咬合小面の形態変化に関しては,第一大臼歯萌出前は,近心または遠心方向を向いていた咬合小面が,第一大臼歯萌出後には,頬側あるいは舌側方向へ向きを変えながら,下顎基準平面と平行な方向に近づいて行く傾向にあった.また,上下歯列間の対咬する咬合小面は,いずれもほぼ平行に近い状態で存在しており,これらの咬合小面について,第一大臼歯の萌出前から萌出後にかけての,上顎咬合小面と下顎咬合小面の角度変化量から,上下の咬合小面は,咀嚼時の対咬接触により互いに協調しながら,その形態を変化させていることが明らかとなった.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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