小児歯科学雑誌
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28 巻 , 2 号
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  • 森川 重嗣, 山崎 章, 斎藤 武郎, 三田 明, 久保田 玲子, 田辺 俊昭
    1990 年 28 巻 2 号 p. 305-312
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    6 歳男児で骨形成不全症(Shields' Type I) に随伴して認められた, 象牙質形成不全症の下顎乳切歯を光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡およびX線マイクロアナライザーを用いて観察した.
    光顕的にはエナメルー象牙質境付近の象牙質は疎で不規則な細管構造を示し,髄周象牙質に相当する領域では細管構造はほとんど見られず,両者の間には裂隙が存在した.この様な細管構造の不規則性は走査電顕所見でも明らかであった.
    X線マイクロアナライザーを用いてCaとPの分布を計測した結果,象牙質形成不全症歯牙の象牙質では正常歯に比較し明らかに低い値を示し,特に,エナメノレ象牙質境にそった25~35μm幅の外套象牙質に相当する部分で極端にその分布が低かった.
    今回の観察から,遺伝的障害は主として象牙質形成初期の象牙芽細胞を侵襲し,結果として,特に基質小胞を介しての石灰化の障害や象牙芽細胞の寿命の短命化をもたらしたものと推定される.また,これらの象牙芽細胞の死後はおそらく歯髄由来の未熟な細胞によって残りの不規則な象牙質形成がなされたものと思われる.
  • 竹中 稔, 山崎 要一, 緒方 哲朗, 小田 博, 早崎 治明, 阿部 和久, 中田 稔
    1990 年 28 巻 2 号 p. 313-326
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の顎口腔機能の発達過程を解明する目的で, 咬合機能の軌跡であると考えられる咬合小面に着目し,その立体的形態変化の様相を明らかにするために,歯牙三次元形態測定解析システムを開発した.このシステムは,咬合面形態の三次元座標値を入力するための歯牙三次元座標測定システムと,入力された座標値をもとに,咬合面形態の三次元的解析を行うための入力座標解析システムより構成され,形状測定用基準ブロックを使った精度試験の結果,高い測定精度が証明された.
    本システムを用いて,第一大臼歯萌出前後の経年歯列石膏模型が得られた小児11名(男児7名,女児4名)の乳犬歯と第二乳臼歯咬合小面の形態変化を三次元的に解析した.その結果,第一大臼歯萌出前では,上下第二乳臼歯とも,主として機能咬頭の各歯面に咬合小面が分布していたが,萌出後はさらに非機能咬頭の歯面にも多数出現していたため,第二乳臼歯部における咬合小面数は,上下顎のいずれも統計学的に有意に増加していた.咬合小面の形態変化に関しては,第一大臼歯萌出前は,近心または遠心方向を向いていた咬合小面が,第一大臼歯萌出後には,頬側あるいは舌側方向へ向きを変えながら,下顎基準平面と平行な方向に近づいて行く傾向にあった.また,上下歯列間の対咬する咬合小面は,いずれもほぼ平行に近い状態で存在しており,これらの咬合小面について,第一大臼歯の萌出前から萌出後にかけての,上顎咬合小面と下顎咬合小面の角度変化量から,上下の咬合小面は,咀嚼時の対咬接触により互いに協調しながら,その形態を変化させていることが明らかとなった.
  • 細矢 由美子, 有冨 匡子, 後藤 讓治
    1990 年 28 巻 2 号 p. 327-337
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    露髄面に塗布したフッ化ジアンミン銀の歯髄反応について観察する事を目的に研究を行った.
    成犬歯牙に対し,エアータービンに装着したカーバイトバーで,窩底の一部が露髄する深さまで窩洞形成を行った.露髄部を含む窩底に3 8 % フッ化ジアンミン銀(サホライド)を塗布した群を実験群(28例),何も塗布しない群をコントロール群(27例)とした.両群共に,窩洞には何ら充填処置を行わず,窩洞を開放状態で放置した.実験日数は,3日,7日及び30日とし,病理組織学的観察を行った結果,下記の結論を得た.
    1)すべての実験日数について,両群共に,歯髄固有細胞は重篤な病変を示し,壊死,化膿,円形細胞浸潤,出血及び充血が極めて高頻度に認められた.
    2)術後30日例では,歯髄固有細胞の瘢痕化と根管壁硬組織添加が,実験群で各々2例(25%),コントロール群で各々2例(16.7%)ずつ認められた.
    3)病理成績は,実験群の30日例とコントロール群の7日例に1例ずつ概良例がみられた以外,他の症例はすべて病理成績不良であった.
    4)露髄面に対する38%フッ化ジアンミン銀塗布は,歯髄に対し何ら保護的作用を示さなかった.
  • 藤田 充康, 木下 憲治, 八若 保孝, 石丸 雅恵, 小口 春久
    1990 年 28 巻 2 号 p. 338-345
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    下顎前歯部および小臼歯部に発症した集合性歯牙腫の3症例について,その硬組織のCa/P比測定と脱灰象牙質のアミノ酸分析をおこない,その結果を永久歯と乳歯を対照として比較検討した.その結果,硬組織脱灰液中のCa/Pモル比は乳歯,永久歯,歯牙腫をとわずエナメル質で1.67~1.68,象牙質で1.65~1.69とほぼ一致していた.象牙質のアミノ酸分析では,永久歯,乳歯と比較して歯牙腫で数種のアミノ酸の増加または減少がみられた.更にリジン残基とハイドロキシリジン残基の総和に対するハイドロキシリジン残基の割合(リジン水酸化率)を比較すると,乳歯のそれは,永久歯よりも低値を示し,歯牙腫の値は, 乳歯の値よりも更に低い値を示した.永久歯と比較して歯牙腫でのリジンの水酸化率は,t検定により有意に低下していた.しかし,乳歯と歯牙腫との間には,有意差は無かった.また,プロリン残基とハイドロキシプロリン残基の総和に対するハイドロキシプロリン残基の割合(プロリン水酸化率) は, 歯牙腫が永久歯または乳歯の値に比較して低値を示し,歯牙腫の値は乳歯の値よりt検定により有意に低下していた.
  • 西野 瑞穂, 鎌田 浩二, 有田 憲司, 寳田 貫
    1990 年 28 巻 2 号 p. 346-358
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ビタミンD代謝異常症の1つで,血中25-(OH)Dは正常,1,25-(OH)2Dは著しい高値にありながら,腸管,骨などの標的器官における1,25-(OH)2Dに対する感受性の低下が原因で,低カルシウム血症を生じ,くる病症状を発現するビタミンD依存性くる病II型の3症例について,それらの病態を分析し,本症に対する歯科的問題について検討した.本症には,禿頭のある症例とこれを見ない症例とがあるが,本3症例にはすべて禿頭が認められた.
    分析の結果,次の所見を得た.
    1.くる病治療前には,乳歯の象牙質の形成が障害され,象牙質が菲薄で歯髄腔が著しく広かった.この病理像は,大最の活性型ビタミンD(1α-(OH)D3)の投与による治療で,全身のくる病所見が改善されるとともに改善し,正常像を呈するようになった.しかし活性型ビタミンDに対する抵抗性の強い場合は,全身のくる病症状と同様,広い歯髄腔の改善も困難であった.菲薄な象牙質には多数の球間象牙質が認められた.
    2.臨床的に,乳歯のエナメル質形成不全は認められなかった.
    3.永久歯の形成速度は,標準値より遅い傾向にあったが,くる病治療により,キャッチアップし,標準値に追いついた.近遠心幅径も標準値の範囲内にあった.
    4.歯列弓幅径が小さい傾向にあり,長径が大きい傾向にあったが,セファロ分析では,ナジオンおよびオルビターレの位置が標準値よりそれぞれ前下方および下方にある以外は,上下顎骨の発育に特異的異常所見は認められなかった.
    以上の結果から,本症例においては,乳児期より徹底した口腔保健指導を行い,乳歯齲蝕を予防することがきわめて重要であること,およびくる病治療が効を奏すれば,永久歯や顎の発育には重大な問題は生じないことが明らかになった.
  • 丹下 貴司, 清水 貴代美, 今城 伸介, 熊坂 純雄, 檜垣 旺夫
    1990 年 28 巻 2 号 p. 359-370
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本緋究は歯質形成過程における微量金属の機能を解明し,形成不全・石灰化不全または形態異常歯のような歯質の構造異常を示す形成障害の発生機序と微量金属の関連性について明らかにする前段階として,日本国内各地域より収集した乳歯歯質中の微貴金属(Cd,Zn,PbおよびCu)の含有量を定量分析し,その含有量に地域特性が存在するか否かを検討し,さらには日本人の乳歯に含有される平均微最金属値を求めることを目的として行った.
    その結果,以下の結論を得た.
    1.4地域のエナメル質・象牙質におけるカルシウム含有量,リン含有量およびカルシウム・リン比に有意差はなく地域間における歯質石灰化度に差は認められなかった.
    2.エナメル質・象牙質におけるカドミウム,亜鉛,鉛および銅含有量を比較するとすべての地域において4元素ともエナメル質中に高く含有していた.
    3.4地域におけるカドミウム,鉛,亜鉛,銅含有量を比較すると4元素とも歯質内含有量に地域差が認められ,とくにエナメル質において顕著であった.
    4.地域特性は元素により異なることから,歯質内微量金属含有量は各地域の環境汚染状態を示す指標となりうることが示唆された.
  • 後藤 譲治, 張 野, 細矢 由美子
    1990 年 28 巻 2 号 p. 371-380
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    インド人小児の乾燥頭蓋骨10顆の下顎骨より得た健康な乳臼歯39歯を用い,髄床底部の副根管について,咬合面方向よりSEMによる観察を行った結果,下記の所見を得た.
    1)副根管は,下顎骨10症例中の4症例(40%)に,また,被験歯39歯中の14歯(35.9%)に認められ,歯種別間の発現頻度に有意差はみられなかった.
    2)副根管を有する歯牙1歯あたりの副根管の発現個数は,最大10個,最小1個,平均2.8個であった.
    3)副根管は,髄床底部の中央部付近に高頻度に認められた.
    4)副根管開口部の内径は,下顎第1乳臼歯では,最大83μm,最小8μm,平均45.4μmであり,下顎第2乳臼歯では,最大51μm,最小15μm,平均37.3μmであった.歯種別にみた内径には,統計学的有意差はみられなかった.
    5)副根管開口部の形態は,円形のもの(56.4%)が最も多く,次いで楕円形(28.2%),その他(15.4%)の順であった.
    6)副根管は,同一個体の左右同名歯に発現する傾向がみられた.
    7)副根管の発現には個体差があり,副根管が多数歯に存在する場合と全く存在しない場
  • 山本 益枝, 天野 秀昭, 三浦 一生, 長坂 信夫
    1990 年 28 巻 2 号 p. 381-390
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    最近, 小児の食生活にスポーツドリンクが見られるようになってきたが, どの程度浸透しているかについての報告はない.
    今回,我々は,広島市及び近郊の3幼稚園,1保育所で,スポーツドリンク摂取状況に関するアンケート調査を行った.有効アソケート数は505名であり,それを基に各幼稚園,保育所別の比較検討を行った.
    1)子供がスポーツドリンクを「よく飲む」と答えた人は10%未満,「時々飲む」と答えた人が70%前後であった.
    2)「どのような時に飲むか」という設問に対しては,「普段は飲まないが,病気の時に飲む」という回答数が50%前後であり,ついで,「普段は飲まないが,外出した時に飲む」という回筈数が多く,この2つで全体の約70~80%を占めていた.
    3)「飲み始めたきっかけ」については,「脱水状態の時に,水分補給に利用できると医師や看護婦にきいて」という回答数が一番多く,約60%を占めていた.
    4)齲蝕になりやすい飲物と思われているのは,市販ジュース,炭酸飲料,乳酸飲料であり,ついで,市販天然ジュース,自家製ジュース,スポーツドリンク,牛乳,水・茶の順であった.以上のことから,スポーツドリンクを齲蝕になりにくい飲料と思い,日常的に飲用する可能性がうかがわれた.
  • 渡部 茂, 河野 英司, 斉藤 恵美, 上田 正彦, 西平 守昭, 五十嵐 清治
    1990 年 28 巻 2 号 p. 391-396
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    口腔内に分泌された唾液は,歯牙表而のプラークと口腔粘膜との間を1枚のフィルムのように広がり,移動し,やがて嚥下される.その間にプラーク中の様々な物質,例えば酸などの代謝産物は唾液中に拡散する.口腔内に一時停滞するこの唾液量は,ヒトが生理的に行う嚥下を一区切りとして,嚥下直前と直後で変化していることが考えられる.今回,我々はこの唾液量について検討を行った.
    安静時,嚥下直後の唾液量Xは,被験者の安静時唾液中のカリウム濃度(Ci)を計測し,通常通り唾液を嚥下した直後,3mlの蒸留水で5秒間口をゆすぎビーカーに吐き出させ,その量をVとし,そのカリウム濃度をCfとし,X×Ci=(V+X)×Cfより求めた.嚥下直前の口腔内に貯留する唾液量Yは,被験者の安静時唾液分泌量をその被験者の生理的な嚥下回数で除し,1回の嚥下唾液量Zを求め,Y=X+Zより求めた.実験は5歳児60名(男児30名,女児30名)を対象とした.
    その結果,安静時唾液量の平均値は0.22±0.14ml/minで,口腔内に停滞している唾液量はそれより多く,嚥下直前で0.50±0.15ml,嚥下直後で0.37±0.11mlであった.また,平均嚥下回数は1.6±0.6回/分で,1回の嚥下で嚥下される平均の唾液量は0.13±0.06mlであった.
    これらの値をLagerlofらの求めた成人の値と比較すると,各々およそ50%の値を示しており,Dawesのコンピューターシュミレーションによれば,わずかに小児の方が唾液クリアランス能が優れていることが示唆された.
  • 石川 雅章, 佐藤 公子, 宮新 美智世
    1990 年 28 巻 2 号 p. 397-406
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯外傷の後継永久歯に与える影響を探る目的で,受傷後も定期的なリコールに応じ,後継永久歯の萌出をみた66名126歯を調査したところ以下のような所見を得た.
    1)後継永久歯の萌出,歯冠,歯根および歯髄のいずれかになんらかの異常を認めたものは72歯となった.このうち歯冠の形成,石灰化への影響が最も多く,白斑は55歯,黄斑は4歯,減形成は11歯に観察された.
    2)萌出時期が反対側より1年半遅れた上顎中切歯が1歯,捻転が2歯にみられた.歯根については3歯に屈曲が,形成停止が1歯に認められた.歯髄の石灰化を疑わせるものが2歯存在した.
    3)受傷時年齢が低いほど,後継永久歯歯冠へ影響を及ぼす割合および重症度が高くなる傾向が窺えた.後継歯に減形成と黄斑が観察された例での受傷時年齢は限定されていた.
    4)初診時診断からは,歯周組織損傷の重症度とともに,乳歯の移動方向などが後継歯歯冠の形成や石灰化へ影響を与えうると推察された.
    5)処置別では,観察群,抜歯群で減形成が比較的多く観察された.整復固定群では,黄斑と中等度以上の白斑の出現率が固定群より多かった.
    6)初診直後または経過観察中に歯内療法を受けた後順調に経過した群では,軽度の白斑しか観察されなかったが,歯内療法後抜歯にいたった群では,歯内療法を受けずに抜歯された群よりも白斑の出現する率が高かった.
    7)白斑の発現位置については,上下顎とも切縁側1/3に頻発していた.
  • 細矢 由美子, 中村 則子, 安藤 匡子, 加島 知恵子, 松井 貴志, 後藤 讓治
    1990 年 28 巻 2 号 p. 407-416
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯切削エナメル質に対するレジンの接着性について,エッチング時間の影響を観察した.
    資料としては,冷凍保存した牛下顎乳切歯50歯を用いた.エッチングは,40%正燐酸ゼリーを使用し,エッチング時間は,0,10,20,30及び60秒とし,30秒間スプレー水洗を行った.レジンは,クラレ社製Photo BondとPhoto Cleafil Aを使用した.切削エナメル質に対し,剪断接着試験を行い接着強さを測定するとともに,剪断接着試験後のエナメル質面とレジン面をSEMで観察し,下記の結論を得た.
    1)接着強さが最も高かったのは,エッチング時間が30秒(80.10±13.01MPa)の場合であった.
    2)エッチングなし群とすべてのエッチング時間群間の接着強さに有意差がみられ,エッチング群が高かった.
    3)エッチング群については,エッチング時間が20秒と10秒間及び10秒と30秒間の接着強さ並びにエッチング時間が20秒とエッチング時間が30秒及び60秒間の接着強さに有意差がみられ,いずれも後者の接着強さが高かった.
    4)剪断接着試験後のエナメル質面において,小柱構造が明瞭な状態は,接着強さが高い群ほど高頻度に認められた.
  • 宮田 友晴
    1990 年 28 巻 2 号 p. 417-431
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は食品の性状や習慣性咀嚼が小児咀嚼筋活動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.被検者は咬合または顎口腔系に異常を認めず,日常の食事において習慣性の咀嚼側を有する乳歯列期小児10名,混合歯列期小児10名,永久歯列期成人10名を対象とし,性状の異なる3食品を習慣側と非習慣側で咀嚼した時の顎運動および左右側側頭筋前腹,咬筋の筋電図を記録した.顎運動からは閉口相,咬合相,開口相,サイクルの各相時間について,また筋電図からは各筋活動最について観察した.さらに中心咬合位における最大咬みしめ時(クレンチング)の左右側側頭筋前腹,咬筋の筋活動量を合計したクレンチング時総筋活動量に対する咀嚼時総筋活動量の割合をMA Indexとして発達に伴う小児咀嚼筋活動の変化についても検討した.その結果,以下の結論を得た.
    1)習慣性岨嚼が顎運動リズムに及ぼす影響は各歯列群ともに小さかった.筋活動量に及ぼす影響は永久歯列群の作業側の側頭筋前腹,咬筋および平衡側咬筋においてのみ認められた.
    2)食品の性状の違いが顎運動リズムに及ぼす影響は乳歯列群ではみられなかったが,発達に伴い閉口相を除くほかの相で有意な差がみられた.筋活動量では各歯列群とも軟性弾力性食品としたカマボコ,軟性粘着性食品としたガム,硬性線維性食品としたスルメの順に大きくなっていた.
    3)MA Indexは発達に伴い低下したことから成人では小児に比べ,機能的に'ゆとり'のある咀嚼を行なっていると考えられた.
    4)MA Indexは発達に伴う小児咀嚼筋活動の機能的な変化を評価する上で有効な手段であることが示唆された.
  • 市橋 正昭
    1990 年 28 巻 2 号 p. 432-448
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    チューインガム咀嚼時の顎運動パターンを矢状面より観察し, 顎の成長や不正咬合が顎運動にどのような影響を及ぼしているかについて検討を行った.
    被検者は乳歯列期(7名),混合歯列期(9名)と永久歯列期(10名)の個性正常咬合を有する者と,不正咬合群として交叉咬合(7名)および骨格性下顎前突(10名)を有する混合歯列期の小児を用いた.
    1)乳歯列群では咀嚼幅の狭いパターンが特徴的であった.一方,混合歯列群,永久歯列群では咀嚼幅の増加や開閉口路の交差および逆サイクルタイプが多く出現していた.
    偏位量および咀嚼幅については,開閉口路ともに乳歯列群が最も大きい偏位量を示した.咀嚼幅については乳歯列群が最も小さく,混合歯列群が最も大きいことが認められた.
    2)不正咬合群の顎運動パターンについては,下顎前突群では逆サイクルタイプの高い出現を認めた.
    偏位量および咀嚼幅については,開閉口路とも交叉咬合群および下顎前突群の偏位量は正常咬合群に比べて小さく,垂直的な経路を示した.交叉咬合群の咀嚼幅は正常咬合群と比較して狭く,逆に下顎前突群では幅の広いパターンを示した.
    以上の結果より,矢状面における顎運動パターンが成長発育にともなって変化すること,さらに不正咬合によって影響を受けていることが示唆された.
  • 若松 紀子, 岡本 圭一, 真部 滋記, 生野 伸一, 藤居 明範, 小泉 龍矢, 飯沼 光生, 辻 甫, 棚瀬 精三, 吉田 定宏
    1990 年 28 巻 2 号 p. 449-458
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    慢性的なフッ素中毒として現れる,ヒト形成不全歯のエナメル質においては,有機質成分が残留し,小柱内ならびに小柱間のアパタイトの結晶密度が小さく,すう粗になっていることが報告されている.また,エナメルタンパクのうちアメロゲニンには,アパタイト結晶の成長を抑制する作用があり,歯質の成熟に伴って分解されていくに従い,その能力も小さくなることが示されており,アメロゲニンの低分子化の阻害が,斑状歯の成因に関与していることが考えられる.そこで,本実験においては,ラットに長期間NaFを含む水を与え,形成された石灰化不全エナメル質の結晶性を微小焦点X線回折によって評価した.さらに,成熟期のアメロゲニンを抽出し,電気泳動によって分子量の変化を調べた.その結果,100ならびに200ppmF-投与群のエナメル質に,著明なX線透過性の石灰化不全部が観察された.そして,その部分の結晶性は,a軸,c軸方向ともに0ppmF-群に比べて低く,その傾向はa軸において著しくみられた.また,電気泳動からは,100ならびに200ppmF-群は0ppmF-群に比べて, 高分子量タンパク質の残留ないし低分子化の遅滞が起こっていることが明らかになった.
    以上の結果から,斑状歯エナメル質においては,高分子量アメロゲニンの低分子化が妨げられ, そのためにアパタイト結晶の成長が抑制され, 結晶性の低下が起ることが示唆された.
  • 笹井 浩司, 岡本 義正, 三島 達平, 田村 康夫
    1990 年 28 巻 2 号 p. 459-465
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    咬合音診査を成長発育段階にある小児に応用する目的で,咬合音採取方法と咬合音波形の変動要因の一つである閉口速度による波形変化について検討を行った.
    被検者は臨床的に明瞭な咬合音を有する成人および小児各3名とし,咬合音採得は,コンデンサマイクロフォンを使用する口外法で行ない,眼窩下部および外耳道部の二カ所より採得した.また,顎運動解析装置を用いtooth tapping時の閉口速度を算出し,その変化による咬合音の最大振輻および持続時間の変動について検討した.その結果,
    1)今回の咬合音採得部位では外耳道部に比べ眼窩下部のほうがより明瞭な咬合音波形を検出できた.
    2)タッピングレートを変えた場合には,約60回から120回未満で行わせれば適切な咬合音が採得できた.
    3)タッピングレートが等しい場合には,閉口速度は成人群に比較し小児群は僅かに速い傾向を認めた.
    4)閉口速度の増加に伴い,波形の最大振幅は増大し咬合音持続時間の延長傾向を示したが,持続時間の延長は小児群に著明であった.
    5)閉口速度が等しければ,小児群の方が振幅の小さい波形を示した.
  • 石田 良介, 三島 賢郎, 足立 ちあき, 宮本 充子, 大嶋 隆, 甘利 英一, 神山 紀久男, 檜垣 旺夫, 赤坂 守人, 吉田 定宏, ...
    1990 年 28 巻 2 号 p. 466-485
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    全国9地区における乳歯列期の男児503名,女児473名,合計976名(平均年齢4.9歳)と永久歯列期の男児457名,女児456名,合計913名(平均年齢16.6歳)とを調査対象として,先天欠如歯,過剰歯,栓状歯,癒合歯,双生歯,異常結節(基底結節・中心結節・カラベリー結節・プロトスティリッド・臼旁結節),エナメル質形成不全(白斑・着色・減形成)の発現頻度を歯種別に診査した.また,上記対象者のうち印象採得が可能であった乳歯列期の男児465名,女児440名,合計905名と永久歯列期の男児391名,女児354名,合計745名の歯牙模型を資料として,歯冠の近遠心および頬舌的最大幅径を計測し,歯牙硬組織の発育障害と歯冠幅径との関連を調査した.その結果,乳歯列では先天欠如が17名(1.7%)に認められ,その多くは下顎乳側切歯であった.先天欠如を認めた者では,上顎乳犬歯,下顎乳側切歯の歯冠幅径が近遠心的に小さかった.栓状歯は11名(1.1%)に発現し,そのほとんどが上下顎乳犬歯であった.また,癒合歯は5.3%にみられ,下顎前歯部にのみ認められた.エナメル質形成不全では白斑が最も高頻度で16.0%にみられ,特に第二乳臼歯に多かった.次いで減形成が6.4%に,着色は5.2%に認められた.
    永久歯では,先天欠如は5.7%に認められ,その多くは下顎第二小臼歯であった.この先天欠如を認めた老では,上顎中・側切歯,下顎犬歯が近遠心的に小さかった.栓状歯は3.0%に発現し,ほとんど上顎側切歯であった.また,これらの発現者の下顎中切歯は,近遠心的に小さかった.癒合歯は0.5%に認められ,双生歯,過剰歯は見られなかった.異常結節の発現頻度は基底結節が1.1%,中心結節が2.6%,カラベリー結節が7.1%,プロトスティリッドが0.3%,臼旁結節が1.3%であった.中心結節を有する者は, 男性より女性に多く,その上顎側切歯は近遠心的に大きかった.カラベリー結節を有する者は上下第一,第二大臼歯が頬舌,近遠心ともに大きく,下顎前歯でも頬香的に大きかった.エナメル質形成不全では白斑が最も高頻度で24.9%に認められ,特に上顎中切歯に多かった.次いで減形成が9.2%に,着色は8.1%に認められた.
    以上の結果は,歯数の異常と形態の異常の多くが,歯の大きさと強く関連しており,永久歯においてその傾向が顕著であることを示している.
  • 長坂 信夫, 信家 弘士, 石通 宏行, 市川 史子, 三浦 一生
    1990 年 28 巻 2 号 p. 486-492
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    我々は,歯牙硬組織の発育障害の予防,処置および管理を目的として,形成不全歯の病理組織像をとりあげ,特にエナメル質を主体として検討を行った.対象は,肉眼的に形成不全歯と診断した抜去歯のうち,歯牙表面の異常所見と関連した組織所見が明らかなもの7歯とした.観察方法は,障害部の肉眼的およびレプリカによる観察を行った後,未脱灰切片標本を作成し,一般光学顕微鏡,偏光顕微鏡,蛍光顕微鏡,マイクロラジオグラフィーにて観察を行った.検討に際してはエナメル質の形成不全を原因別に全身的原因によるもの,局所的原因によるもの原因不明なものに分けて行った.その結果,
    1.全身的原因によるものでは,減形成を認めた乳歯でレチウスの成長線に沿ってエナメル質の欠損が認められた.また,石灰化不全を認めた症例では,表面の異常部と一致してエナメル質深層のエナメル象牙境付近にレチウスの成長線にそった低石灰化部が認められた.
    2.局所的原因によるものではエナメル質減形成はレチウスの成長線に関連を持ち,エナメル象牙境は著しく乱れ離断されたり,エナメル質の重複やさらに一部では象牙質が隆起露出している部分を認めた.
    3.原因不明なものでは白斑は表層から限局性に,また,レチウスの成長線に関連なく均一な低石灰化像が認められた4.7例中5症例にテトラサイクリンによると思われる蛍光線がエナメル質,象牙質ともに認められた.
  • 藤原 理彦, 藤岡 万里, 佐藤 昌史, 佐々 竜二
    1990 年 28 巻 2 号 p. 493-502
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Chondrodysplasia Punctataは,骨幹端異形成症候群に属する疾患である.本症は,レントゲン写真よりepiphysis,またはapophysisの軟骨内点状石灰化像を認め,四肢短縮,関節拘縮,鞍鼻,皮膚異常,白内障,知能低下などの症状を現わす症候群である.今回,点状軟骨異形成症のrhizomelic formと確定診断を受けた4歳1カ月の女児に関して顎顔面頭蓋部を中心に歯科的な検討を行い,以下の所見を得た.
    1.乳歯の大きさは正常咬合を有する健常児と比較して,歯冠近遠心幅径,唇頬舌幅径共に全歯種で小さな値を示した.
    2.乳歯列弓は,健常児と比べ歯列弓幅で大きく,歯列弓長は小さく,側方への拡大傾向が認められた.
    3.口蓋の深さは,健常児と比べわずかに小さな値を示した.
    4.顎顔面部の角度および長さの計測より,下顎に関しては劣成長を示した.
    5.乳中切歯の歯軸傾斜が,上下顎ともに大きな値を示した.
    6.上下顎歯槽基底部の前方での成長の遅れが認められた.7.下垂体点三角の面積より,脳頭蓋(冠)部は,後頭部,特に深さに関して大きな値を示した.また,上・中顔面部においては,ほぼ平均に近く,下顔面部は小さな値を示した.
  • 西野 瑞穂, 有田 憲司, 菊地 賢司, 寶田 貫, 木内 晶子, 鎌田 浩二, 阿部 典子, 三木 真弓
    1990 年 28 巻 2 号 p. 503-509
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    先天代謝異常には歯牙形成異常を併発するものも少なくない.今回,これまでに報告されているものの他に歯の形成異常を併発する先天代謝異常があるか,あるとすればその形成異常はどの程度のものであるかを知る目的で,徳島大学医学部小児科代謝異常外来を受診した生後5カ月から15歳5カ月までの小児21名の口腔内検診を行った.その結果,
    1)ヒスチジン血症患者では,7名の内6名にエナメル質の白斑,軽度陥凹,減形成,癒合歯,栓状歯傾向,中心結節様異常結節などが観察された.
    2)GM1-ガングリオシドーシス患者1名に,著明な白斑が認められた.
    3)大理石病患者1名,糖原病IX型患者2名の内の1名,ホモシスチン尿症患者2名の内の1名に,白斑,減形成などが認められた.
    4)これまでに,エナメル質形成不全を伴うことがあると報告されている低リン血性ビタミンD抵抗性くる病,ビタミンD依存性くる病II型およびガラクトース血症患者については,エナメル質形成不全は観察されなかった.
    今回の調査から,ヒスチジン血症およびGM1-ガングリオシドーシスとエナメル質形成不全との関連が強く示唆された.また,先天代謝異常によって発症する歯の形成異常について,より正確な知見を得るためには,さらに症例を集積し検討する必要のあることが示された.
  • 朝田 芳信, 山下 素子, 橋本 眞理, 原 昌伸, 栗原 洋一
    1990 年 28 巻 2 号 p. 510-517
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    1983年1月から1987年12月末までの過去5年間に日本大学松戸歯学部附属歯科病院小児歯科外来を受診した,有病患児で,かつ歯科医療管理を行った68名を対象に,初診時に保護者がどのような意識を持って本学小児歯科部に来院したのかを中心にその実態調査を行った結果,保護者の歯科治療に対する意識に変化の傾向が示唆された.
    なお,今回行った調査と比較検討する目的から1978年度についても併せて記した.
    1,初診来院患児数に対する有病患児数の比率に,近年増加の傾向がみられた.
    2,有病患児の疾患別分布状況については,循環器疾患,アレルギー性疾患および血液疾患が中心であった.
    3,有病患児の多くが齲蝕処置を主訴としていた.
    4,近年有病患児の保護者において,口腔疾病に対する関心度が高まっていることが推察された.
  • 奥 猛志, 森主 宜延, 小椋 正, 堀 準一, 大野 秀夫
    1990 年 28 巻 2 号 p. 518-527
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    我々は,顎関節症患者の歯科医療管理対応の向上を目的とし,当科を受診した顎関節症患者を対象としたアンケートによる追跡調査を行い,以下の結果を得た.
    1.アンケート用紙の回収率は,終了患者61.5%,中断患者38.9%であり,平均は50.7%であった.
    2.アンケート回答者全員による結果は,治療に入る前,顎関節症についての説明に対して理解した人が60.5%であった.治療中の問題点として,Splintに対して,2.6%が,全く使用できなかったと答え,84.2%は,違和感を感じたものの使用していた.治療時間に対しては,57.9%が治療時間が長いと感じていた.治療終了後に症状の残存もしくは再発がみられた者は,33.3%であり,その内,一時的ですぐ消失した者が22.2%であった.
    3.終了群と中断群間で,統計的有意差が認められた項目は,初回説明後の治療に取り組む姿勢,Splintの使用状況,Splint装着時の不快事項の訴え,通院間隔への問題意識の4項目であった.
    4.終了群は中断群に比較し,初診時,開口障害を訴えていた者の割合が高頻度を示した.
  • 奥 猛志, 森主 宜延, 小椋 正, 伊藤 学而, 堀 準一, 大野 秀夫
    1990 年 28 巻 2 号 p. 528-538
    発行日: 1990/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯列不正をマルチブラケット装置を用い,積極的に矯正治療を行うことは,顎関節症患者に好ましい咬合の生理的安定を得るために,有効であると考えられる.
    今回,Splint療法後に矯正治療を積極的に行った4症例の治療経過ならびに治療前後の咬合状態,咀嚼筋機能の分析により,顎関節症治療における矯正治療の有効性と問題点について検討し,以下の結果を得た.
    1.矯正治療中の顎関節症症状(開口障害,疼痛,雑音)は,全て顎間ゴムの使用と関連し,顎内ゴムのみの使用中に発現した症状は,顎関節部違和感であった.
    また,顎関節雑音は,III級顎間ゴム使用中に発現し,マルチブラケット装置除去後も残存した.この症例では,マルチブラケット装置除去後は,初診時と比較し下顎頭が,下方位から中央位へ変化し,関節円板の前方偏位がみられた.
    2.4症例とも矯正治療により,咬合状態は改善した.
    3.咀嚼筋活動評価とSilent Periodの評価から,矯正治療後は,初診時と比較し,咀嚼筋機能は,改善された.
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