抄録
露髄面に塗布したフッ化ジアンミン銀の歯髄反応について観察する事を目的に研究を行った.
成犬歯牙に対し,エアータービンに装着したカーバイトバーで,窩底の一部が露髄する深さまで窩洞形成を行った.露髄部を含む窩底に3 8 % フッ化ジアンミン銀(サホライド)を塗布した群を実験群(28例),何も塗布しない群をコントロール群(27例)とした.両群共に,窩洞には何ら充填処置を行わず,窩洞を開放状態で放置した.実験日数は,3日,7日及び30日とし,病理組織学的観察を行った結果,下記の結論を得た.
1)すべての実験日数について,両群共に,歯髄固有細胞は重篤な病変を示し,壊死,化膿,円形細胞浸潤,出血及び充血が極めて高頻度に認められた.
2)術後30日例では,歯髄固有細胞の瘢痕化と根管壁硬組織添加が,実験群で各々2例(25%),コントロール群で各々2例(16.7%)ずつ認められた.
3)病理成績は,実験群の30日例とコントロール群の7日例に1例ずつ概良例がみられた以外,他の症例はすべて病理成績不良であった.
4)露髄面に対する38%フッ化ジアンミン銀塗布は,歯髄に対し何ら保護的作用を示さなかった.