小児歯科学雑誌
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歯牙硬組織の発育と障害に関する研究
日本国内4地域における乳歯歯質中微量金属(Cd,Zn,PbおよびCu)の含有量について
丹下 貴司清水 貴代美今城 伸介熊坂 純雄檜垣 旺夫
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1990 年 28 巻 2 号 p. 359-370

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抄録
本緋究は歯質形成過程における微量金属の機能を解明し,形成不全・石灰化不全または形態異常歯のような歯質の構造異常を示す形成障害の発生機序と微量金属の関連性について明らかにする前段階として,日本国内各地域より収集した乳歯歯質中の微貴金属(Cd,Zn,PbおよびCu)の含有量を定量分析し,その含有量に地域特性が存在するか否かを検討し,さらには日本人の乳歯に含有される平均微最金属値を求めることを目的として行った.
その結果,以下の結論を得た.
1.4地域のエナメル質・象牙質におけるカルシウム含有量,リン含有量およびカルシウム・リン比に有意差はなく地域間における歯質石灰化度に差は認められなかった.
2.エナメル質・象牙質におけるカドミウム,亜鉛,鉛および銅含有量を比較するとすべての地域において4元素ともエナメル質中に高く含有していた.
3.4地域におけるカドミウム,鉛,亜鉛,銅含有量を比較すると4元素とも歯質内含有量に地域差が認められ,とくにエナメル質において顕著であった.
4.地域特性は元素により異なることから,歯質内微量金属含有量は各地域の環境汚染状態を示す指標となりうることが示唆された.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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