抄録
ビタミンD代謝異常症の1つで,血中25-(OH)Dは正常,1,25-(OH)2Dは著しい高値にありながら,腸管,骨などの標的器官における1,25-(OH)2Dに対する感受性の低下が原因で,低カルシウム血症を生じ,くる病症状を発現するビタミンD依存性くる病II型の3症例について,それらの病態を分析し,本症に対する歯科的問題について検討した.本症には,禿頭のある症例とこれを見ない症例とがあるが,本3症例にはすべて禿頭が認められた.
分析の結果,次の所見を得た.
1.くる病治療前には,乳歯の象牙質の形成が障害され,象牙質が菲薄で歯髄腔が著しく広かった.この病理像は,大最の活性型ビタミンD(1α-(OH)D3)の投与による治療で,全身のくる病所見が改善されるとともに改善し,正常像を呈するようになった.しかし活性型ビタミンDに対する抵抗性の強い場合は,全身のくる病症状と同様,広い歯髄腔の改善も困難であった.菲薄な象牙質には多数の球間象牙質が認められた.
2.臨床的に,乳歯のエナメル質形成不全は認められなかった.
3.永久歯の形成速度は,標準値より遅い傾向にあったが,くる病治療により,キャッチアップし,標準値に追いついた.近遠心幅径も標準値の範囲内にあった.
4.歯列弓幅径が小さい傾向にあり,長径が大きい傾向にあったが,セファロ分析では,ナジオンおよびオルビターレの位置が標準値よりそれぞれ前下方および下方にある以外は,上下顎骨の発育に特異的異常所見は認められなかった.
以上の結果から,本症例においては,乳児期より徹底した口腔保健指導を行い,乳歯齲蝕を予防することがきわめて重要であること,およびくる病治療が効を奏すれば,永久歯や顎の発育には重大な問題は生じないことが明らかになった.