小児歯科学雑誌
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食品および習慣性咀嚼が小児咀嚼筋活動に及ぼす影響
宮田 友晴
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1990 年 28 巻 2 号 p. 417-431

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抄録
本研究は食品の性状や習慣性咀嚼が小児咀嚼筋活動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.被検者は咬合または顎口腔系に異常を認めず,日常の食事において習慣性の咀嚼側を有する乳歯列期小児10名,混合歯列期小児10名,永久歯列期成人10名を対象とし,性状の異なる3食品を習慣側と非習慣側で咀嚼した時の顎運動および左右側側頭筋前腹,咬筋の筋電図を記録した.顎運動からは閉口相,咬合相,開口相,サイクルの各相時間について,また筋電図からは各筋活動最について観察した.さらに中心咬合位における最大咬みしめ時(クレンチング)の左右側側頭筋前腹,咬筋の筋活動量を合計したクレンチング時総筋活動量に対する咀嚼時総筋活動量の割合をMA Indexとして発達に伴う小児咀嚼筋活動の変化についても検討した.その結果,以下の結論を得た.
1)習慣性岨嚼が顎運動リズムに及ぼす影響は各歯列群ともに小さかった.筋活動量に及ぼす影響は永久歯列群の作業側の側頭筋前腹,咬筋および平衡側咬筋においてのみ認められた.
2)食品の性状の違いが顎運動リズムに及ぼす影響は乳歯列群ではみられなかったが,発達に伴い閉口相を除くほかの相で有意な差がみられた.筋活動量では各歯列群とも軟性弾力性食品としたカマボコ,軟性粘着性食品としたガム,硬性線維性食品としたスルメの順に大きくなっていた.
3)MA Indexは発達に伴い低下したことから成人では小児に比べ,機能的に'ゆとり'のある咀嚼を行なっていると考えられた.
4)MA Indexは発達に伴う小児咀嚼筋活動の機能的な変化を評価する上で有効な手段であることが示唆された.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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