抄録
乳歯切削エナメル質に対するレジンの接着性について,エッチング時間の影響を観察した.
資料としては,冷凍保存した牛下顎乳切歯50歯を用いた.エッチングは,40%正燐酸ゼリーを使用し,エッチング時間は,0,10,20,30及び60秒とし,30秒間スプレー水洗を行った.レジンは,クラレ社製Photo BondとPhoto Cleafil Aを使用した.切削エナメル質に対し,剪断接着試験を行い接着強さを測定するとともに,剪断接着試験後のエナメル質面とレジン面をSEMで観察し,下記の結論を得た.
1)接着強さが最も高かったのは,エッチング時間が30秒(80.10±13.01MPa)の場合であった.
2)エッチングなし群とすべてのエッチング時間群間の接着強さに有意差がみられ,エッチング群が高かった.
3)エッチング群については,エッチング時間が20秒と10秒間及び10秒と30秒間の接着強さ並びにエッチング時間が20秒とエッチング時間が30秒及び60秒間の接着強さに有意差がみられ,いずれも後者の接着強さが高かった.
4)剪断接着試験後のエナメル質面において,小柱構造が明瞭な状態は,接着強さが高い群ほど高頻度に認められた.