抄録
咬合音診査を成長発育段階にある小児に応用する目的で,咬合音採取方法と咬合音波形の変動要因の一つである閉口速度による波形変化について検討を行った.
被検者は臨床的に明瞭な咬合音を有する成人および小児各3名とし,咬合音採得は,コンデンサマイクロフォンを使用する口外法で行ない,眼窩下部および外耳道部の二カ所より採得した.また,顎運動解析装置を用いtooth tapping時の閉口速度を算出し,その変化による咬合音の最大振輻および持続時間の変動について検討した.その結果,
1)今回の咬合音採得部位では外耳道部に比べ眼窩下部のほうがより明瞭な咬合音波形を検出できた.
2)タッピングレートを変えた場合には,約60回から120回未満で行わせれば適切な咬合音が採得できた.
3)タッピングレートが等しい場合には,閉口速度は成人群に比較し小児群は僅かに速い傾向を認めた.
4)閉口速度の増加に伴い,波形の最大振幅は増大し咬合音持続時間の延長傾向を示したが,持続時間の延長は小児群に著明であった.
5)閉口速度が等しければ,小児群の方が振幅の小さい波形を示した.