小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
第2小臼歯歯胚の位置異常によって生じたと思われる下顎左右第1大臼歯の萌出障害の1症例
斉藤 恵美渡部 茂前山 善彦丹羽 弥奈五十嵐 清治
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 28 巻 4 号 p. 1125-1130

詳細
抄録
永久歯の埋伏の発生頻度は一般に上顎犬歯,第3大臼歯などに多く,第1大臼歯では稀であるとされている.今回,我々は下顎の第2小臼歯歯胚が下顎第1大臼歯の上方に位置し,これが障害となって両側の第1大臼歯が萌出困難を来たしたと思われる症例に遭遇し,観察および治療を行った.得られた所見ならびに治療法は次のとおりであった.
1.症例は8歳7カ月の男児で,X線診査によると,下顎において第2小臼歯歯胚が第2乳臼歯の遠心根下に位置し,そのために左右の下顎第1大臼歯の萌出が障害されていた.
2.第2小臼歯のほぼ直下に位置する第1大臼歯は近心傾斜しており,根は短小で近心根の彎曲が認められた.
3.本症例の原因は,発生段階における第2小臼歯歯胚の位置異常と第1大臼歯の近心傾斜によるものと思われたが,全身所見および既往歴に特記すべき事項はみられなかった.
4.第1大臼歯の萌出を促すために,第2乳臼歯の抜歯と第2小臼歯歯胚の摘出を行い,開窓状態にて経過観察を行った後,装置を用いて牽引を行った.このような埋伏歯の早期発見には,定期診査時においてオルトパントモグラフなどを用いた積極的な診査を規則的に行うことが必要と思われた.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事
feedback
Top