2012 年 68 巻 7 号 p. III_259-III_268
台風等に起因する大雨により,貯水池に大量の濁質や高濁度水が流域から流入する.その結果,貯水池では長期間の高濁度状態が続き,長期にわたり水道水源として大きな問題が発生する.
本論文では,小河内貯水池において大雨時に流入した濁質や高濁度水の早期放流のための基礎的研究として,高濁度状態を引き起こす流入濁質の挙動を把握することを目的に,平常時と高濁度時の濁質の比較分析を行い,台風通過前後の差異を検討し,高濁度状態の主要な要因を明らかにするとともに,貯水池への影響を考察した.その結果,大雨によって流入する難沈降性濁質の成分は5μm以下の粘土粒子であることが明らかとなり,貯水池内の高濁度化現象の主因であることが示された.さらに,流入濁質とリンの挙動が類似して,リンは主にPO4-P(リン酸態リン)として存在していることが確認できた.