抄録
昭和56年より59年までに東北大学歯学部附属病院小児歯科を受診し,乳歯列期より口腔管理を開始し,第一大臼歯萌出後3年以上経過した小児220名に対し,現在の口腔管理の問題点を明らかにするために第一大臼歯の齲蝕罹患状況,予防処置状況について実態調査を行った.
萌出5年後には,約半数の歯が充填歯となっているが,充填歯面数は少なく齲蝕の重症化は避けられている.上顎より下顎で高い齲蝕罹患を示したが,咬合面齲蝕のみに限れば上下顎間で差はみられなかった.女子は,男子に比べ全ての歯面で齲蝕罹患が高く,発生時期も早かった.
約75%の第一大臼歯にフィッシャーシーラントが行われており,咬合面齲蝕の発生が抑制されていた.また,健全歯にフィッシャーシーラントを填塞した後3年以上経過しても半数近くが特に不快事項もなく良好に経過していた.しかし,C1と診断した歯にフィッシャーシーラントを填塞した場合には,充填処置へ移行する割合が高く,初期齲蝕に対してフィッシャーシーラントを行う場合には,術式,填塞材料の吟味はもとより,注意深い経過観察の必要性の高いことが示唆された.
なお,萌出後,ラバーダム防湿が可能となるまでの間の咬合面,下顎頬側面の管理をいかに行うかが重要な課題であることが指摘された.