小児歯科学雑誌
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Hemifacial Hypertrophyを有する一症例の顎口腔機能の観察
下顎運動所見を中心として
山崎 要一早崎 治明緒方 哲朗中田 稔浜野 良彦
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1991 年 29 巻 1 号 p. 186-195

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抄録

本学小児歯科外来で, 5 歳8 カ月時より経過観察を行っている右側の顔面半側肥大症に罹患した女児について,9歳2カ月時に歯列咬合状態,顎関節部のX線学的所見等に加えて,歯の接触関係,下顎運動測定など顎口腔機能の面から解析を行ったところ,以下の結論が得られた.
1.上顎歯列弓は,ほぼ対称的な形態であったが,下顎歯列弓は上下的に複雑に歪んでおり,下顎自体の左側方への偏位が大きいため,切歯部から左側臼歯部にかけて著しい交叉咬合を呈していた.
2.咬頭嵌合位,左右側方咬合位における歯の接触は,いずれも右側に多く存在しており,左側はほとんど接触していなかった.
3.下顎運動所見において,前方滑走,左右側方滑走,最大開閉口のいずれの運動においても,右側顆頭は左側よりも関節窩内での滑走量が小さく,回転主体の運動を行っているものと考えられた.
4.右側顎顔面の肥大により,歯の接触が右側に集中した歯列咬合状態となり,右側のみの片側咀嚼が長期化したため,主咀嚼側の顎関節に復位性関節円板前方転位を引き起こし,下顎運動にも特徴的な変化が現われたものと推察された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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