抄録
免疫抑制剤“Ciclosporin”(Cyclosporin A,CYA)の口腔領域における副作用として歯齦増殖が指摘されている.そこで肝臓移植を受けCYAを服用中の日本人小児9名(平均年齢6歳10カ月)および対照として健常児11名(平均年齢7歳0カ月)について口腔内診査を行い,歯周組織の臨床的所見について両者を比較検討した.その結果,以下の結論を得た.
1.Plaque indexおよびCalculus indexはCYA投与群,対照群とも同程度で,両者間に有意差は認められなかった.
2.Probing pocket depth,Gingival indexおよび歯齦増殖度は1%の危険率でCYA投与群の方が有意に大きな値を示した.
3.歯種別の臨床所見は,Plaque index,Calculus indexおよびGingival indexについては各歯種間で有意差は認められなかったが,Probing pocket depthは,乳中切歯と中切歯間では,中切歯の方が有意に大きい値を示し,中切歯と第一大臼歯間でも中切歯の方が有意に大きい値を示した.
4.今回の調査においては,CYA投与量,血中濃度(trough level),肝臓移植後の経過日数と歯科的所見の間に特に関連性は認められなかった.