人の乳歯エナメル質においてRetziusの成長線は不明瞭だが,発育障害を伴うと明瞭に認められる.その発育障害線が,形成された時期を,新産線を基準にして明らかにし,既往歴と合わせて検討した.
資料として,障害児より得られた抜去乳前歯で,表面にエナメル質形成不全のないものを用いた.方法は,未脱灰切片標本を作製し,光学顕微鏡・偏光顕微鏡にて観察を行った.その内,新産線以外に発育障害線のみられたもの15症例について検討した.新産線と,Schourの人の歯の年齢的基準をもとに,発育障害線の時期を算出し,妊娠中と出生後の既往歴を保護者よりアンケートと問診により調査し検討した.その結果,
1. 15症例の内,出生前のみに発育障害線が発現した症例はなく,出生後のみに発現した症例は12例,出生前と出生後の両方に発現した症例は3例である.
2. 出生後のみに発現した12症例の内,発育障害線に一致して,既往歴の認められるのは,5症例である.
3. 出生前と出生後の両方に発現した3症例の内,発育障害線に一致して既往歴の認められるのは,2症例で,2症例とも出生前,出生後共に,既往歴が認められる.
4. 発育障害線が,多数(10本以上)認められた症例は6症例である.
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