小児歯科学雑誌
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晩期残存乳歯の病理組織学的検討
信家 弘士中島 正人城所 繁長坂 信夫
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1991 年 29 巻 4 号 p. 829-838

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抄録

我々は本学歯学部小児歯科学講座が収集した晩期残存乳歯の中の5症例をとりあげ,脱灰してセロイジン包埋後,ヘマトキシリン・エオジン染色,アザン染色及びチオニン・ピクリン酸染色による病理組織標本を作成して検鏡し次の結論を得た.
1.残存乳歯はどの症例も1歯の残存であり,また後継永久歯の欠如が認められたのは1症例のみで,そのほかには後継永久歯の位置異常が認められた.
2.歯髄壁は第二象牙質の形成が著しく認められたが,象牙芽細胞を認めない症例がほとんどであった.
3.固有歯髄では正常な歯髄像を呈した症例はなく,ほとんどの症例で吸収部から侵入したと思われる歯根膜を認めた.また後継永久歯が欠如した1症例で歯髄構造が認められたものの,萎縮,変性,線維化など退行性変化を呈していた.
4,全症例に歯根吸収を認めたが,その吸収程度は歯根がほぼ吸収しているものから根尖部が少しのみ吸収されているものまで認められた.
5.吸収部にはハウシップ窩のような典型的な吸収窩を認めたものは1症例であったが,ほとんどの症例には吸収窩にセメント質またはセメント質様硬組織の添加が認められ,特に歯冠部の歯髄壁にも著明なセメント質の添加が認められる症例があった.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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