抄録
骨髄移植患者は免疫反応を抑制するといった治療の性格上呼吸器,口腔を含めた消化管からの感染を生じ易く適切な口腔管理が必要となる.今回Myelodysplastic syndromeの9歳男児の口腔診査,管理を行った.口腔管理は3期に分けて考えた.すなわち
1期:骨髄移植前,
2期:骨髄移植後より顆粒球数回復まで,
3期:頼粒球回復後,である.
1期においては主として患者,家族,看護スタッフへのコンサルト,歯垢,歯石除去,歯面清掃,刷掃指導を行った.
2期は無菌室での管理となり,抗生剤,抗真菌剤,抗ウイルス剤の投与が行われ,食後の刷掃,0.35%ポビドンヨード含漱などで口腔の清潔保持に努めた.この時期には血小板数低下時の一時的な歯肉出血,免疫抑制剤による歯肉増殖を認めた.
3期は歯垢,歯石除去,刷掃指導と定期検診を行った.全経過を通じ細菌,真菌,ウイルスによる感染はみなかった.これは 1)小児科医による抗菌剤,抗ウイルス剤の予防的投与, 2)無菌室下の管理, 3)口腔の刷掃指導清掃,含嗽などの結果と思われた.