抄録
小児歯科臨床におけるフッ化モリブデン酸アンモニウム{ (NH4)2MoO2F4} の齲蝕進行抑制効果を確かめる目的で,10%(NH4)2MoO2F4溶液を使用し,歯面塗布を行い経時的観察を行った。
対象は,岩手医科大学小児歯科外来を受診した小児26名であり,乳歯48歯である。
その結界,次のような結論を得た。
1.唇(頬)面齲蝕の齲蝕病巣面積の比率の経時的変化を調べた結果,被検歯群は有効率62.1%を示し,統計的に有意に有効性が認められた。
2.臼歯隣接面齲蝕では,レントゲン写真による判定で,16歯中,対照歯では4歯において被検歯では1歯のみにおいて,齲蝕の進行が認められ,被検歯では15歯は何ら進行することなく経過した。
3. 10%(NH4)2MoO2F4溶液塗布による副作用ならびに歯質への着色を示した症例は1例も認められなかった。以上の結果より10%(NH4)2MoO2F4溶液は,齲蝕進行抑制剤として,臨床的に応用が可能であると考えられた。