抄録
新潟大学歯学部附属病院小児歯科外来において, 小児の頬粘膜に生じたInflammatory Fibrous Hyperplasiaを2症例経験し,次のような臨床的所見および病理学的所見を得た。
1)患児は,11歳4ヵ月の女児および8歳6ヵ月の男児で,ともに既往歴,家族歴,全身所見に特記すべき事項はなかった。
2)口腔内所見では,2症例とも左側頬粘膜に,小豆大および米粒大の境界明瞭,広基性の腫瘤が認められた。表面は平滑で正常粘膜色だった。臨床診断は粘液嚢胞の疑いであった。
3)病理組織学的にみると,腫瘤の主体は膠原線維の増生で,筋性血管や神経線維束もみられ,また,僅かであるが上皮直下に慢性炎症細胞の浸潤もみられた。腺組織はみられなかった。病理組織学的診断は,Inflammatory Fibrous Hyperplasiaであった。
4)処置方法は,局所麻酔下にて腫瘤を摘出した。術後の経過は良好であり,再発は認められない。