抄録
歯肉色の変化は, 歯周組織の状態を示す重要な所見の一つである.今日まで様々な角度からのアプローチがなされているものの歯周疾患の発現する前段階の小児期については必ずしも明確にされてはいない.そこで, 臨床的に正常歯肉と判断された3歳から14歳までの小児109名, および18歳から28歳までの成人21名を対象に, 上顎前歯部について三刺激値直読型色差計CD-270を用い測色学的検討を行った.
1)色差計にイメージファイバーを組み込むことにより, 再現性が向上し, 臨床的測色が簡便に可能となった.
2)ステージ別の測色値においては, L*値では混合歯列期(IIIB期)に低下のピークを示し, a*値では混合歯列期(IIIB期)に増加のピークを示した.しかし, b*値では全時期を通じ大きな変化は認められなかった.
3)部位別の測色値においては, L*値では乳頭, 辺縁部歯肉に比べ付着歯肉部の方が低い値を示したのに対し, a*値では逆に付着歯肉部の方が高い値を示した.また, b*値では部位の差はほとんど見られなかった.
4)性差においては, 乳歯列期(IIA期)ではa*値が有意の差を持って女児の方が高い値を呈したが, 混合歯列期(IIC期-IIIB期)では差が見られなかった.また, 永久歯列期(成人)ではL*値が有意の差を持って男性の方が高い値を呈した.