小児歯科学雑誌
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モルモットにおける吸啜から咀嚼への発達第1報吸啜・咀嚼の指標設定
成田 優一鵜飼 紀久代飯沼 光生吉田 定宏
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1993 年 31 巻 1 号 p. 8-14

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抄録
ヒトの摂食行動にかかわる吸啜から咀嚼への転換を理解する目的で我々は比較生物学的に,モルモットの仔獣を用い,出生直後よりケージ内の摂食行動を観察し,さらに顎運動および口腔内圧を測定し,それらのパターンの分類を試みた.また吸啜期・咀嚼期およびその移行期を客観的に判断できる指標を確立し,この指標に基づいたモルモットの摂食行動の生後変化を検討した.
その結果,モルモットの摂食行動は,生後7日までは全て母乳のみを吸っており,その後母乳と固形食の両方によって摂食行動を営み,生後26日以後には全てのモルモットは,固形食のみを摂取するようになった.顎運動からみると,生後9日までは単純な開閉運動のみであったが,経日的に側方運動を伴うモルモットが増加し,生後26日で全てのモルモットが側方運動を伴う運動のみとなった.また口腔内圧でも生後9日までは,陰圧のみであったが,経日的に陰圧と陽圧が記録されるモルモットが増加し,生後26日で全てのモルモットは陰圧と陽圧を生じる運動のみになった.
以上の結果より,単純な開閉運動ならびに陰圧のみの時期,また側方運動を伴い陽圧も伴った時期とがほぼ一致していたことから,前者の時期が吸啜運動を,後者では咀嚼運動がなされていると考えられた.このように,口腔内圧と顎運動のパターンを基礎に吸啜と咀嚼の指標として用いることが可能であると判断された.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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