小児歯科学雑誌
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Cat Cry Syndromeの患児の全身麻酔下での歯科治療と歯科的所見
野中 和明立川 義博松本 敏秀佐々木 康成大谷 裕子柳田 憲一池本 清海中田 稔
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1993 年 31 巻 3 号 p. 542-550

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抄録
Cat Cry syndromeは,5番目の染色体のうち1個の単腕の部分的欠質により重度の精神遅滞等の症状を示す疾患であり,5P-syndromeとも言われ,乳児期や幼児期早期の仔猫に似た泣き声が特徴的である.しかしながら歯学領域からの報告が少ないことから,歯や顎顔面頭蓋の形態的特徴については,十分に明らかにはされていない.今回我々が遭遇した初診時16歳の男児では,以下のような興味深い所見が認められた.
1)染色体検査より,5番染色体短腕部分欠失が認められた.
2)両眼開離,眼裂外斜下,斜視,左耳の副耳,および脊柱側彎がみられた.
3)永久歯の先天性欠如や形態異常は認められなかったが,萌出がやや遅延していた.また,健全歯の歯冠近遠心幅径は,標準値より大きい傾向にあった.
4)上下顎前歯部に叢生を認め,さらに吸指癖による開咬状態を呈していた.
5)初診時の側方頭部X線規格写真では,とくに下顎骨の媛小化が認められた.また同時期の後前頭部X線規格写真から,顔面正貌のうち,眼窩周辺および上下顎骨部に左右の非対称性がみられた.
6)重度の精神遅滞があり,外来通院での歯科治療を遂行するに十分な協力状態を得ることができず,全身麻酔下での齲蝕治療を行った.
7)今後の歯科的問題点として,自傷行為の為に下顎前歯唇側歯肉の異常退縮があり,その進行が心配される.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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