小児歯科学雑誌
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31 巻 , 3 号
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  • 日本小児歯科学会
    1993 年 31 巻 3 号 p. 375-388
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    日本人の乳歯歯冠並びに歯列弓の大きさ,乳歯列の咬合状態についての基準値,頻度分布を調査することを目的に全国歯科大学小児歯科学講座の協力を得て収集された2歳6か月より5歳11か月までの乳歯列正常咬合児,男児83名,女児75名,計158名の上下顎歯列模型を資料に計測,観察した結果以下の結論を得た.
    1.すべての各歯の乳歯歯冠近遠心幅径の平均値を得た.上顎第二乳臼歯を除くすべての歯種で有意に女児より男児が大きかった.
    2.2歳代を除く3歳0か月以上5歳0か月未満と,5歳0か月以上5歳11か月以下の2群について,男女別に乳歯列弓の幅径,長径,高径に関する臨床的基準値と標準偏差図表を得た.
    3.各歯間空隙量を測定した.空隙発現状態別頻度は,霊長空隙と発育空隙がともに有する歯列が,上顎は91.8%,下顎は70.9%であった.
    4.ターミナルプレーンの型別出現頻度は,垂直型が85.4%,遠心段階型が8.6%,近心段階型が6.0%であった.
    5.乳犬歯咬合関係は,I型は83.2%,II型は13.0%,III型は3.8%であった.
  • 雲井 秀樹, 大森 郁朗
    1993 年 31 巻 3 号 p. 389-395
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    コンポジットレジンインレー(CRインレー,クラレ社製)を用いて,幼若小臼歯50歯の隣接面齲蝕を修復し,18ヵ月にわたって臨床的に観察した.インレー体,修復歯の歯質および修復歯の歯髄ならびに周囲歯肉の状態の3つの項目について評価を行った.その結果,以下に示すような結果が得られた.
    1.全50症例中,すべての診査項目について「良好」と判定した症例は24例であった.他の26例には何らかの不良な所見がみられたが,疼痛症状のためにインレーを除去した1例を除いては臨床的に許容できるものであった.
    2.不良所見の中で,最も多かったのは損耗の17例で,次いで着色の10例であった.なお,損耗と着色が重複してみられた症例が5例あった.
    3.色調の適合度については,不調和と判定した症例はなかったが,「良好」と判定した症例には「良く調和している」と評価した19例と「良く調和しているとは言えないが,臨床的に許容できる」と判定した30例が含まれていた.
  • 牧 憲司, 葛 立宏, 野沢 典央, 秀島 治, 児玉 昭資, 木村 光孝
    1993 年 31 巻 3 号 p. 396-409
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本論文は,小児における下顎骨の成長発育過程の流れの中で,骨の内部構造を客観的に知る目的で行った.九州歯科大学付属病院小児歯科外来を受診した正常咬合を有する3歳児から6歳児までの小児160名を対象に,パノラマエックス線写真上で,下顎底部皮質骨の計測を行い,次のような結果を得た.
    1.下顎底部皮質骨の厚さの平均値は,男児においては3歳2.43±0.42mm,4歳3.13±0.50mm,5歳3.25±0.40mm,6歳3.48±0.50mmであった.女児においては3歳2.44±0.45mm,4歳3.07±0.49mm,5歳3.14±0.38mm,6歳3.47±0.51mmであった.
    2.T検定の結果,下顎底部皮質骨の厚さは男女間,左右間に有意な差は認められなかった.年齢においては,3歳と4歳,3歳と5歳,3歳と6歳,4歳と6歳,5歳と6歳においては,それぞれ後者が前者に対し有意に大きな値を示した(P<0.01).
    3.下顎第2乳臼歯部におけるパノラマエックス線写真の垂直的方向拡大率1.34により補正すると,男児は3歳で1.81±0.31mm,4歳で2.34±0.37mm,5歳で2.43±0.30mm,6歳で2.60±0.37mm,女児は3歳で1.82±0.34mm,4歳で2.29±0.37mm,5歳で2.34±0.28mm,6歳で2.60±0.38mmであった.
    4.年齢と下顎底部皮質骨の厚さの相関係数はr=0.657であった.回帰直線は下顎底部皮質骨の厚さをY軸にとり,年齢をX軸にとるとY=0.358×+1.243であった.
  • 牧 憲司, 葛 立宏, 木村 京子, 荒牧 利裕, 周 適宏, 山野 博文, 野沢 典央, 木村 光孝
    1993 年 31 巻 3 号 p. 404-411
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    骨組織の内部構造を知る方法として臨床的立場から骨塩定量法がある.橈骨,腰椎などに関する報告はあるが成長期顎骨に関する報告は皆無である.そこで小児期の顎骨の内部構造を知る目的で,九州歯科大学付属病院小児歯科外来を受診した正常咬合を有し,下顎臼歯部に齲蝕や実質欠損のない6歳児から8歳児までの小児60名を対象に下顎骨の骨塩量の測定を行い,以下の結果を得た.
    1.各年齢別の骨塩量の測定結果は,男児,女児ともに増齢的に増加傾向にあった.骨塩量の平均値は男児で6歳3.45±0.41mmAl,7歳3.96±0.61mmAl,8歳4.91±0.75mmAl,女児で6歳3.16±0.411mmAl,7歳3.76±0.51mmAl,8歳3.99±0.61mmAlであった.
    2.男女間,年齢間のT検定の結果は,男女間については6歳から8歳まで有意な差は認められなかった.年齢別の骨塩量を比較すると6,7歳間では7歳が6歳に対し有意に大きな値を示し(P<0.01),6,8歳間では8歳が6歳に対し有意に大きな値を示した(P<0.01).しかしながら7,8歳間においては有意差は認められなかった.
    3.年齢と骨塩量の相関係数r=0.646であった.回帰直線式は,年齢をX軸にとり,骨塩量をY軸にとるとY=0.503×0.005であった.
    4.測定の再現性について基礎的検討事項として,7歳インド人小児頭蓋骨を使用し,i)焦点,被写体ならびにフィルムの位置づけによる骨塩量のばらつきii)エックス線照射線量の変化による骨塩量のばらつきについて変動係数を求めたところ,i)に関しては1.19%,ii)に関しては0.41%と測定値のばらつきの少ないことが確認できた.
  • 門司 靖廣, 西田 郁子, 牧 憲司, 堤 隆夫, 矢野目 鎮照, 吉永 久秋, 太田 和子, 木村 光孝
    1993 年 31 巻 3 号 p. 412-418
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    近年,光照射によって硬化する,光重合型裏層材が開発され,徐々に歯科臨床に浸透しつつある.しかし歯髄に近接して用いられる材料であるにもかかわらず,生物学的な研究報告は少ない.そこで著者らは,市販の2種の光重合型裏層材についてそのベース材料の同定および,硬化体中の残留量の定量を,HPLC(高速液体クロマトグラム)を用いて行い,次のような結果を得た.
    1.光照射前の裏層材1gに含まれる総モノマー量は,IONOSIT® BASE LINER中のBis-GMA;72.88±3.32mg/g,TEDMA;97.26±3.38,ULTRA-BLENDTM中のUDMA;497.95±12.38mg/gであった.
    2.残留モノマー量は光照射時間が長いほど少なくなる傾向が見られたが,IONOSIT®BASE LINERで30秒以上,ULTRA-BLENDTMで40秒以上照射してもほとんど変化が見られなかった.
    3.残留モノマー量は光照射60秒の時,Bis-GMA;7.63±0.53mg/g,TEDMA;11.88±0.58mg/g,UDMA;91.93±4.63mg/gであった.
    以上のことから光重合型裏層材は,硬化体中に残留モノマーが認められることから,少なくとも40秒以上の光照射が必要であることが示唆された.
  • 成田 優一, 劉 栄伸, 飯沼 光生, 吉田 定宏
    1993 年 31 巻 3 号 p. 419-426
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    我々は,以前に乳歯の萌出に伴う健全歯根膜からの求心性インパルスが吸啜から咀嚼への移行に重要な役割を果たしていることを明らかにした.しかし,歯根膜以外の要因,たとえば唾液腺・舌・顎筋・顔面筋・口腔粘膜などからのインパルスも影響していると考えられる.そこで本研究は,消化器系の発達とも関係の深い唾液腺の影響を検討するため,モルモットを用い,第1報で確立した吸啜と咀嚼を区別する指標に基づいて各唾液腺が吸啜から咀嚼への移行に如何なる影響を及ぼしているかを明らかにすることを目的に本実験を行った.
    その結果,咀嚼開始時期は耳下腺を除去しても影響はなく,舌下腺除去で1日,顎下腺除去で2日遅れた.最も影響が大きかったのは,顎下腺と舌下腺の両方を除去した場合で12日遅れた.吸啜終了時期はどの唾液腺を除去しても遅れたが,その遅れは舌下腺除去で3日,耳下腺除去で4日,顎下腺では7日であり,顎下腺の影響が最も大きかった.唾液腺の発達状態を検討するため,唾液腺の重量を計測すると,離乳前期では顎下腺が最も大きく舌下腺,耳下腺の順で,離乳後では顎下腺,耳下腺,舌下腺の順であり,各唾液腺湿重量と各唾液腺除去の影響による咀嚼開始時期,吸啜終了時期の遅れが一致していた.
    以上の結果より,モルモットの吸啜から咀嚼への移行には唾液腺,特に顎下腺除去が大きく影響し,その原因として唾液分泌量との関係が示唆された.
  • 細矢 由美子, 高風 亜由美, 池田 靖子, 冨永 礼子, 後藤 讓治
    1993 年 31 巻 3 号 p. 427-440
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    牛乳歯象牙質に対し,各種歯面処理材,プライマー,ライナー,ボンディング材を用いた場合のレジンの接着性について観察した.
    使用した材料別にCA-Liner Bond群,(CA agent,SA Primef,Photo Bond,Protect Liner),10-3-D Liner群(10-3水溶液,Superbond Primer,Superbond D Liner),リン酸-Photo Bond群(K etchant,Photo Bond)の3群を設けた.コンポジットレジンは,Clearfil Photo Anterior(シェード:A2)を用いた.まず,各種歯面処理材による歯面処理効果をSEMで観察した.次いでサーマルサイクリング試験の有無別に剪断接着強さを測定した.剪断接着試験後の象牙質面とレジン面をSEMで観察した.1)歯面処理効果は,10-3水溶液が最も高く,次いでK etchant,CA agentの順であったが,歯牙の個体差による影響が大きかった.2)非サーマルサイクリング群並びにサーマルサイクリング群の両群において,接着強さの平均値は,10-3-D Liner群が最も高く,次いでCA-Liner Bond群,リン酸-Photo Bond群の順であった.3)CA-Liner Bond群のみについて,サーマルサイクリング試験により接着強さに有意な劣化がみられた.
  • 小出 武, 山賀 まり子, 稗田 豊治
    1993 年 31 巻 3 号 p. 441-446
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    3種類のフッ素(以下Fと略す)徐放性レジンと1種類のグラスアイオノマーセメントを対象に同一規格でF徐放量を測定するとともに同レジンを接触させたアパタイトペレットへのF取り込みについて検討した.F徐放性レジンはF徐放性矯正用光重合型ボンディング材(以下FBと略す),F徐放性光重合型コンポジットレジン(以下FEと略す),およびF徐放性光重合型小窩裂溝用レジン(以下TFと略す)の3種類で,グラスアイオノマーセメント(以下HYと略す)も実験材料に加えた.
    30日間のF徐放総量は,FBが最も多く,以下,HY,FEおよびTFの順であった.アパタイトペレットに取り込まれたF量は,FBが最も多く,以下,HY,FE,TFの順で,F徐放量と同じ順序であった.また,それぞれの徐放F量とFの取り込み量は近似していた.
    作用後のアパタイトについてエックス線回折法を用いて生成物を同定したところ,いずれの実験群からもCaF2は検出できなかった.
  • 谷向 務
    1993 年 31 巻 3 号 p. 447-459
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は味覚感受性の生後発達について明らかにする目的で特にその舌部位差について着目し,マウスを用い舌前部2/3及び後部1/3の味覚を支配する鼓索神経と舌咽神経の応答について哺乳期と成熟期で比較した.
    実験動物には,C57BL/Ksj系統の雌雄マウスを使用し,哺乳期として7-10日齢で体重5-8gのもの,成熟期として8-16週齢で体重25-40gの2つのグループに分類して行った.
    その結果,マウス味覚感受性の生後発達は支配神経により異なること,鼓索神経ではアミロライド感受性NaCl受容メカニズムが,舌咽神経ではうま味の相乗効果をもたらす受容メカニズムが生後発達することが示唆された.
  • 楽木 正実, 大土 努, 新谷 誠康, 大西 智之, 祖父江 鎭雄, 宇根 成美
    1993 年 31 巻 3 号 p. 460-465
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    萌出途上の幼若永久歯に対する小窩裂溝填塞材料を想定して試作したリン酸四カルシウム(4CP)セメントについて,セメントから蒸留水中へのカルシウム,リン,フッ素の溶出量および人工白斑病巣に対する再石灰化作用をin vitroで検討した.4CPセメントからば,対照として用いたグラスアイオノマーセメントに比較して,多量のカルシウムとリンが溶出したが,フッ化物を配合した4CPセメントでは微量のフッ素しか溶出しなかった.また,フッ化物配合の有無にかかわらず4CPセメントで7日間被覆することにより,人工白斑の再石灰化が促進された.グラスアイオノマーセメントではセメント直下の人工白斑の再石灰化は認められなかった.4CPセメントの再石灰化促進作用は,主としてセメントから溶出するカルシウムとリンにより生じると考えられた.
  • 大土 努, 楽木 正実, 祖父江 鎭雄, 宇根 成実
    1993 年 31 巻 3 号 p. 466-469
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    萌出途上の幼若永久歯に対する小窩裂溝填塞材料として開発したフッ化カルシウム1%配合リン酸四カルシウムセメントの効果を,臨床実験により検討した.実験群の齲蝕発生率は,6ヵ月後で14%,12ヵ月後で17%,18ヵ月後で28%であった.一方未処置対照群の齲蝕発生率は,6ヵ月後で17%,12ヵ月後で34%,18ヵ月後で41%であり,いずれの観察時期においても実験群の方が齲蝕発生率は低かった.4CPセメントで填塞したことによる齲蝕減少率は6ヵ月後で20%,12ヵ月後で50%,18ヵ月後で33%であった.以上の結果,フッ化カルシウム1%配合リン酸四カルシウムセメントは,レジン系の小窩裂溝填塞材が適用できるまでの間,暫間的に使用する齲蝕予防材料として有効であることが判明した.
  • 森主 宜延, 中尾 さとみ, 奥 猛志, 豊島 正三郎, 小椋 正, 堀 準一
    1993 年 31 巻 3 号 p. 470-477
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    鹿児島市内小学校,中学校各1校,高等学校4校の生徒3,143名を対象に顎関節症の発症頻度,ならびにその徴候の発現頻度と分布,さらに,徴候形態について調査し,8年前,著者らの行った同様な調査と比較検討した結果,以下の結論を得た.
    1.8年前と比較し鹿児島市の顎関節疲の発症頻度は,統計学的に有意差を認め増加していた.
    2.発症頻度の増加は,男女差を認め,特に女子で著しく増加していた.
    3.顎関節症の徴候形態分布から,複合徴候の分布頻度の増加傾向が認められ,単独徴候分布における,疹痛ならびに開口障害の増加傾向,さらに複合徴候における,開口障害関連複合徴候の増加傾向などから,重症化傾向にあることも示された.
  • 小椋 正, 中尾 さとみ, 豊島 正三郎, 奥 猛志, 松本 晉一, 堀川 清一, 森主 宜延, 堀 準一
    1993 年 31 巻 3 号 p. 478-484
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    顎関節症の発症頻度の報告には,かなりのバラツキがある.その理由は,診査に採用した症状と診査方法の違いによるためである.すなわち,三大症状の他に頭痛と異常顎運動などの症状を調査の対象に加えたかどうか,その他臨床診査などの方法の違いである.そこで,同一の診査者が同一の診査方法で顎関節症の発症頻度を東京都内と鹿児島市内の中学生と高校生の一般集団を対象として,地域差や環境差を検討し,以下の結果を得た.
    1)東京都と鹿児島市の中学生と高校生の顎関節症の発症頻度は同程度であり,地域差はないと考えられた.
    2)東京都と鹿児島市の中学生,高校生の顎関節症の発症頻度はともに男女差があり,女子の値が高頻度を示した.特に東京都,鹿児島市ともに女子の多い高校の顎関節症の発症頻度が最も高かった.しかし,統計学的な有意差は認められなかった.
    3)単独症状における徴候形態は,東京都と鹿児島市の中学生,高校生ともに顎関節雑音が最多頻度を示した.中学生から高校生に年齢が増加するに従って単独症状の顎関節雑音は減少し,その代わりに疼痛と開口障害が増加した.
    4)東京都と鹿児島市の中学生,高校生ともに単独徴候が最多頻度を示したが,複合徴候は両地域とも男子と比較して女子が高頻度であった.
  • 岡本 圭一, 長谷川 信乃, 高柳 英司, 松下 繁, 田村 康夫, 吉田 定宏
    1993 年 31 巻 3 号 p. 485-495
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯列期の機能的反対咬合症例10名(平均年齢3歳8ヵ月,平均治療期間1年2カ月)を対象とし,反対咬合治療前後における上下顎対合関係の変化と,また個性正常咬合を有する乳歯列期小児14名(平均年齢4歳11ヵ月)をコントロール群として両群の比較検討を行った.
    分析には本教室で開発した咬合分析装置"Occlusogram"を用いて上下顎犬歯点・臼歯点の相対的位置関係について計測を行い,さらに左右側下顎歯列臼歯点の治療前後の差および左右差,左右下顎臼歯点を結ぶ線のなす角度の差について計測し上下顎関係の改善状態について検討した.
    その結果,下顎歯列が咬合調整により機能的に後退している様子が確認でき,一方上顎歯列弓長径が治療後では有意に増大していたことから上顎歯列は下顎のインターロックにより成長が抑制されていたと考えられた.また上顎に対して下顎歯列が単に機能的早期接触により近心位をとるだけでなく下顎のローテーションを伴っていることが明らかとなった.
  • 後藤 讓治, 張 野, 細矢 由美子
    1993 年 31 巻 3 号 p. 496-509
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    インド人小児乾燥頭蓋骨10顆の下顎骨より得た健康な乳臼歯39歯を用い,根分岐部の副根管についてSEMによる観察を行った.その結果を同一試料を用いて行った乳臼歯髄床底部における副根管の状況(既報)と比較して,以下の知見を得た.
    1)乳臼歯根分岐部の副根管は,下顎骨10症例中の9症例(90%)に,また,被検歯39歯中の33歯(84.6%)に総計182個(第1乳臼歯73個,第2乳臼歯109個)認められた.この値は,乳臼歯髄床底部の副根管の発現よりかなり多く,両者間には有意差が見られた(P<0.01).
    2)乳臼歯根分岐部に副根管を有する歯牙に対する1歯あたりの副根管の発現個数は,最大20個,最小1個,平均5.5個であった.この値は,髄床底部の平均値である2.8個の約2倍であった.
    3)乳臼歯根分岐部における副根管は,根分岐部の中央中心部において高頻度に発現した.この傾向は髄床底部の場合と同様であった.
    4)根分岐部副根管の開口部の内径は,第1乳臼歯では最大240μm,最小13μm,平均76.1μmであり,第2乳臼歯では最大300μm,最小19μm,平均96.1μmであった.これらは,髄床底部副根管開口部の内径平均値(第1乳臼歯45.4μm,第2乳臼歯37.3μm)より大きく,両者間には有意差が見られた(P<0.01).
    5)根分岐部副根管の開口部の形態は,髄床底部のものと同様で,円形のものが95個(52.2%)と最も多く見られた.
    6)根分岐部の副根管は,同一個体の左右同名歯に発現する傾向があった.また,その発現には個体差があり,多数歯に存在する場合と全く存在しない場合があるように思われた.
  • 大谷 裕子, 野中 和明, Ike Siti Indiarti, 中田 稔, 小野 博志, 石川 雅章, 神山 紀久男, 祖父江 鎭雄, 長 ...
    1993 年 31 巻 3 号 p. 510-526
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは,1990年に中国本土の都市(北京市)と農村(四川省楽山市)および香港の3地域において,漢民族小児の口腔疾患に関する実態調査を行った.現地調査において採得した歯列石膏模型を用いて,漢民族小児の歯と歯列の大きさを調査し,中国大陸3地域に居住する漢民族小児の歯および歯列の大きさについての地域間差を比較検討したところ,次のような結果を得た.
    1)乳歯の歯冠近遠心径と頬舌径の大きさにおいて,左右差はなかったが,男児の方が女児より大きい傾向にあった.
    2)永久歯の歯冠近遠心径と頬舌径の大きさにおいて,左右差はなかったが,男児の方が女児より大きい傾向にあった.
    3)永久歯の大きさについて Penrose Size Distance による分析を行い,北京・楽山および香港の3地域は福建系中国人および日本人とサブクラスターを形成した.
    4)歯列弓幅径および弓長は,3歳児から6歳児にかけて増加する傾向を示した.またいずれの地域でも,男児が女児より大きかった.
  • 野中 和明, 大谷 裕子, 佐々木 康成, 中田 稔, 小野 博志, 石川 雅章, 神山 紀久男, 祖父江 鎭雄, 長坂 信夫, 小椋 正, ...
    1993 年 31 巻 3 号 p. 527-535
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは,1990年に中国大陸の中でも漢民族によって構成される地域のうち都市部(北京)・農村部(四川省楽山市水口郷村)および香港の三地域で,漢民族小児の口腔疾患実態調査を行った.そして現地調査において得られた歯列咬合状態について分析したところ,次のような結果を得た.
    1.歯列空隙に関しては,叢生の割合が楽山においては他の2地域より高かった.また,3歳で高く6歳では減少がみられたが,12歳児・15歳児では増加した.
    2.歯の位置異常に関しては,転位が増齢的に増加する傾向にあった.
    3.咬合異常に関しては,3歳児・6歳児は過蓋咬合の割合が高く,12歳児・15歳児では上顎前突の割合が高い傾向にあった.
    4.咬耗に関しては,3地域の3歳児・6歳児・12歳児・15歳児とも高頻度でみられた.
    5.中国人小児の咬合異常としては,過蓋咬合から上顎前突の傾向がみられ,日本人小児の咬合の異常としては,切端咬合から下顎前突の傾向があった.
  • 大谷 裕子, 野中 和明, 松本 敏秀, 柳田 憲一, 佐々木 康成, 裵 宗玄, Ike Siti Indiarti, 後藤 哲哉, 中田 ...
    1993 年 31 巻 3 号 p. 536-541
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    九州大学歯学部附属病院小児歯科外来を受診した患児のうち,口腔内診査およびエックス線写真検査により,小臼歯における中心結節の存在の有無の判定が可能な歯列発育時期にあった2,272名を観察し,以下の結果を得た.
    1)口腔内診査およびエックス線写真検査により,81名の患児の171歯に中心結節の出現を認めた.
    2)中心結節の出現は下顎第二小臼歯に最も多く認められ,次に下顎第一小臼歯,上顎第二小臼歯,上顎第一小臼歯の順であった.なお,左右両側同名歯に同結節の出現を認めたのは,46名(56.8%)と高頻度であった.
    3)担当医により口腔内萌出前に同結節を発見できたのは28歯(16.4%),口腔内萌出直後で破折前に発見されたのは75歯(43.8%),破折後発見されたのは21歯(12.3%),同結節を発見する以前に当科通院中断となったのは47歯(27.5%)であった.
    4)同結節の臨床的対応法の内分けは,経過観察中が11歯(6.4%),削合処置が66歯(38.6%),歯髄処置が14歯(8.2%),中断が50歯(29.2%),根管充填済みが3歯(1.8%)であり,その他が27歯(15.8%)であった.
  • 野中 和明, 立川 義博, 松本 敏秀, 佐々木 康成, 大谷 裕子, 柳田 憲一, 池本 清海, 中田 稔
    1993 年 31 巻 3 号 p. 542-550
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Cat Cry syndromeは,5番目の染色体のうち1個の単腕の部分的欠質により重度の精神遅滞等の症状を示す疾患であり,5P-syndromeとも言われ,乳児期や幼児期早期の仔猫に似た泣き声が特徴的である.しかしながら歯学領域からの報告が少ないことから,歯や顎顔面頭蓋の形態的特徴については,十分に明らかにはされていない.今回我々が遭遇した初診時16歳の男児では,以下のような興味深い所見が認められた.
    1)染色体検査より,5番染色体短腕部分欠失が認められた.
    2)両眼開離,眼裂外斜下,斜視,左耳の副耳,および脊柱側彎がみられた.
    3)永久歯の先天性欠如や形態異常は認められなかったが,萌出がやや遅延していた.また,健全歯の歯冠近遠心幅径は,標準値より大きい傾向にあった.
    4)上下顎前歯部に叢生を認め,さらに吸指癖による開咬状態を呈していた.
    5)初診時の側方頭部X線規格写真では,とくに下顎骨の媛小化が認められた.また同時期の後前頭部X線規格写真から,顔面正貌のうち,眼窩周辺および上下顎骨部に左右の非対称性がみられた.
    6)重度の精神遅滞があり,外来通院での歯科治療を遂行するに十分な協力状態を得ることができず,全身麻酔下での齲蝕治療を行った.
    7)今後の歯科的問題点として,自傷行為の為に下顎前歯唇側歯肉の異常退縮があり,その進行が心配される.
  • 船越 禧征, 鈴木 聡子, 犬石 隆人, 小出 武, 稗田 豊治, 和田 聖二, 田中 昭男
    1993 年 31 巻 3 号 p. 551-558
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    肝移植の手術後に免疫抑制剤Cyclospolin A(CsA)の投与をうけている患児の歯肉増殖を経験し,臨床的ならびに組織学的に検索した.患児は3歳3ヵ月,女児で,CsAの投与量は180mg/d,投与期間は28カ月である.口腔内所見として上下顎にわたり歯肉の増殖が認められ,増殖歯肉の色調はピンク色で,硬く弾力性があった.歯肉の発赤や出血はなかった.増殖した歯肉のポケットの深さは約1-4mm程度であったが排膿や出血はなかった.歯に着色がみられた.エックス線写真から歯槽骨には骨破壊や骨吸収などはみられなかった.増殖した歯肉の病理組織学的所見は表面は重層扁平上皮で被覆され,上皮下には一部に過錯角化,有棘層肥厚および上皮突起の延長がみられた.また,上皮下の深部に密なコラーゲン線維束の増生を認めた.本疾患児に対する口腔管理として重要なことは齲蝕歯および歯肉増殖部からの感染を防止することである.歯肉増殖はCyclospolin A投与患児すべてに発生するわけでないこと,歯牙の存在しない部位には発生しないことからプラークが増殖因子として密接に関与しているものと考えられる.そのため,プラークコントロールに主眼をおいた歯口清掃,ならびに歯性感染の原因となる齲蝕の早期発見,早期治療に努めることが最も大切である.
  • 富永 敏彦, 寳田 貫, 原田 桂子, 西野 瑞穗
    1993 年 31 巻 3 号 p. 559-573
    発行日: 1993/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    思春期前期に発症した顎関節症2症例に対し,生理的な顎口腔系の成長発達および心理的特性を考慮して,咬合育成の面から検討を行った.症例1は,10歳0ヵ月の女児で,開口障害を主訴に来院した.発症原因は〓〓交叉咬交合による咬合的要因が主因と考えられたが,顎関節症を発症しやすいと報告されている心理的要因も有していた.クローズドロックの認められた症例であった.側方歯の生理的な萌出を抑制することなく,咬合挙上による顎関節部の安静,および〓〓の頬側傾斜移動を行う目的で〓〓部補助弾線付スプリントを装着した.約2週間後症状は軽減し,約2ヵ月後,〓〓交叉咬合が改善し,左右側小臼歯部に咬合接触が認められるようになり,スプリント非装着時においても症状の消失が認められた.症例2は8歳2ヵ月の男児で,右側顎関節部の違和感および最大開口時の右側顎関節雑音および疼痛を主訴として来院した.発症原因は心理的要因が強く,〓〓既製乳歯冠装着により咬頭嵌合位が定まらず不安定になったことが誘因で発症したと考えられる.症状が軽度で,乳歯冠にはすでに咬耗傾向がみられたため,簡易精神療法のみで経過観察を行った.約5ヵ月後症状は消失し,13歳5ヵ月時まで再発は認められていない.思春期前期は顎口腔系の形態的,機能的変動が著しく,心理的にも情動的不安定が生じやすい時期である.このような思春期前期に発症した顎関節症に対しては,積極的な咬合治療の適否の判定さえ困難である.本2症例の検討から,思春期前期の顎関節症に対しては,決して永久歯列の顎関節症に対する治療法の移行ではなく,成長発達期であることを充分に考慮したアプローチが必要不可欠であることが示唆された.
  • 1993 年 31 巻 3 号 p. 584-
    発行日: 1993年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
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