抄録
3歳から5歳の小児の歯科診療協力度を初診時に予測判定し,診療時の歯科医師の小児への対応法の選択を適切にするため,「幼児歯科診療協力性検査」を確立する目的で本研究を行い,以下の結論を得た.
1.91項目(分析方法上の理由から以後アイテムという)から成る観察,検査ならびに調査を100人の小児とその母親に実施し,この中から小児の歯科診療時の適応性と高い相関性を有する36アイテムを抽出した.この36アイテムより成る適応・不適応判別モデルの判別的中率を,91アイテムの研究対象者100人および新たな初診小児67人について検討した結果,前者では90.0%,後者では85.1%であった.この結果から,本研究で抽出した36アイテムより成る「幼児歯科診療協力性検査」は,臨床的にきわめて有用であると考える.
2.受付から診療台上での診療開始までの小児の行動や情緒をよく観察することが,診療協力度を予測する上で重要である.
3.初診時に,受診動機や歯科診療,歯科医師に対する小児の気持ちを,小児自身の言葉で述べさせることは,診療協力度を予測する上できわめて有用である.
4.歯科受診歴の有無,受診歴がある場合その時治療ができたか,否かを調査すること,および母親のY-G性格検査のI尺度を検査することは,小児の歯科診療協力度を予測する上で有用な判断資料となる.