小児患者が,診療室で歯科医師をどのように見ているのか知るため,術者の正立顔写真をテスト画像に用い,ビジコンアイカメラを使用し,小児の眼球運動を測定した.そして,小児の顔の見方を分析したところ,顔の内から外,顔の内のみ,顔の外から内,顔の外のみ,の4つに分類することができた.これを,輪郭を含む顔全体を図,背景を地とした図一地反応として,高木・坂本幼児児童性格診断検査,母親に関する要因,養育環境に関する要因などの心理的・環境的要因と,小児の顔の見方とに関連性があるかを予測する目的で,多変量解析の数量化II類および因子分析を行い,以下の結論を得た.
1.被験者の97%は,初回停留点までの視線が図反応を示し,瞬時に顔全体を見ていることがわかった.
2.被験者の3%は,地反応を起こした.
3.小児自身の心理的・性格的要因は,小児の顔の見方に少ないが影響を与えることがわかった.
4.母親の要因を含む環境的要因は,小児の顔の見方に影響を与えることがわかった.
5.相関比の最も大きい相関軸でdグループ:背景(外のみ)が,次いでbグループ:顔の内部(内のみ)が,そしてaグループ:顔から背景へ(内→ 外)とcグループ:背景から顔の内部へ(外→ 内)が判別された.
6.各要因間では,YG性格診断検査のA型とD型,高木・坂本幼児児童性格診断検査の社会的安定性および個人的安定性と,その他の因子の間に相関のあることがわかった.
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