小児歯科学雑誌
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成長発達期における咬合力の増大にかかわる各種要因
第1報全身的発達要因および歯科的要因との関係
殿内 真知子青木 浩子中島 謙二松田 成彦田村 康夫
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1995 年 33 巻 3 号 p. 449-462

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抄録

成長発達期にある小児において咬合力の増大と,身体的要因,運動能力要因ならびに歯科的要因(不正咬合,顎機能異常,齲蝕)の個々の因子とが,いかなる関係にあるかを検討する目的で,3歳から14歳までの小児1992名を対象に咬合力測定を行った. その結果,以下の結論を得た.
1.成長発達期にある小児において,咬合力は男子女子ともに年齢と高い正の相関を示して増大し,性差は正常群(形態的および機能的正常者),不正群(不正咬合,顎機能異常を有する者)とも全体的に男子が高く,5歳以降で差は明瞭になっていた.
2.標準化偏回帰係数によって検討した結果,身長,体重の身体的要因では一定の傾向を認めなかったが,運動能力要因では男子女子ともに握力が,また女子の50m走が咬合力に対し高い寄与を示していた.
3.正常群と不正群の咬合力を比較した結果,男子の4, 9歳,女子の4, 5歳で有意差が認められたが,全体では差はみられなかった.
4.不正咬合ならびに顎機能異常の有無を数量化理論I類により評価した結果,女子では不正咬合および顎機能異常は咬合力に対して負の寄与を示していた.
5.齲蝕経験と咬合力との関係を標準化偏回帰係数による評価を行った結果,DMF+df歯数は咬合力に対して負の寄与を示した.
以上の結果より,咬合力の増大には増齢による性差を伴った全身的発達と同時に歯科的要因,運動能力要因とも関連していることが示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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