小児歯科学雑誌
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カイウサギ乳臼歯の生理的歯根吸収の日齢変化に関する組織化学的研究
角田 俊彦小澤 英浩
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1995 年 33 巻 5 号 p. 1029-1041

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抄録
永久歯萌出に伴う生理的乳歯歯根吸収開始時期の破歯細胞の分化の過程や,外部吸収が進行する過程で破歯細胞周囲の細胞との相互作用などを明らかにすることを目的に本研究を行った.カイウサギを用い,乳歯の生理的歯根吸収の過程における破歯細胞の分化について,その周囲組織との関連性に注目し,酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)活性検出と,アルカリフォスファターゼ(ALPase)活性ならびにTRAP活性検出の二重染色を行い,酵素組織化学的に光学顕微鏡で観察を行った.
その結果,生後2日齢においてTRAP陽性の破歯細胞およびその前駆細胞が歯根表層と歯根周囲の結合組織内に出現する事が明らかになった.これらのTRAP陽性細胞を取り囲む結合組織の間質系細胞およびセメント芽細胞は,ALPase活性陽性を示し,この領域においてTRAP活性陽性の前駆細胞が多核化することが示された.歯根吸収が,歯髄腔に達するようになると破歯細胞近傍の象牙芽細胞はしばしば扁平化ないしは消失している.
以上の結果から,破歯細胞の分化が破骨細胞の分化の過程に類似し,歯根周囲のALPase活性陽性を示す間質系細胞が,破歯細胞の分化・活性化に密接に関与する可能性を強く示唆された.また,象牙芽細胞の形態変化は,破骨細胞が活性化する際の骨芽細胞の形態変化と類似することが示された.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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