小児歯科学雑誌
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上顎左側乳切歯癒合歯とその後継永久歯の発育遅延・萌出遅延の1例
田村 裕子大島 邦子米持 浩子野田 忠
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1995 年 33 巻 5 号 p. 903-911

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抄録
小児歯科臨床において,乳歯の癒合歯はしばしば遭遇する形態異常の一種であるが,乳歯列内における過剰歯を含めた3歯癒合の報告は非常にまれである.私たちは本学小児歯科外来を訪れた6歳0か月の男児において,上顎左側乳中切歯,乳側切歯および過剰歯と思われる3歯の癒合歯を認め,その経過を観察した.
家族歴,既往歴,全身所見においては特記すべき事項は認められなかった.
その形態および位置から,中央部に位置する歯が過剰歯と思われ,乳中切歯,乳側切歯および過剰歯間には象牙質による結合が認められた.また,乳中切歯,過剰歯間では歯冠部,歯根部歯頸側寄りにおいて歯髄の連絡も認められた.
癒合歯は,歯根吸収の進行が遅く,反対側永久中切歯の萌出後も自然脱落が期待し得なかったため,8歳2か月の時点で抜歯したが,その後も左側永久中切歯の自然萌出は認められず,萌出遅延の状態を呈した.9歳6か月時に同部の歯肉の開窓を行ったところ,病理組織学的に黄色腫を認めた.その後,開窓により中切歯は萌出したが,同側の永久側切歯歯胚の発育は著しく遅延しており,9歳11か月の時点で同歯胚の歯冠は2/3程度の形成状態であった.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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