小児歯科学雑誌
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小児の歯の外傷の実態調査
日本小児歯科学会
キーワード: 小児, 歯の外傷, 乳歯, 永久歯
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1996 年 34 巻 1 号 p. 1-20

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抄録

日本小児歯科学会は,小児の口腔の健康管理法の確立を目指し,さまざまな努力をしているが,今回は小児の歯の外傷の予防法および治療法の確立を目的として,その実態を調査した。調査は平成5年4月1日から平成6年3月31日までの1年間,全国28大学の小児歯科で行われ,1175人の小児の2008歯の外傷が調べられた。
受傷時年齢は乳歯では0歳から10歳までに分布し,1歳から3歳が特に多かった。永久歯では4歳から17歳までが扱われ,特に7歳から9歳が多かった。男児は女児より多く,永久歯では男児が女児の2倍であった。
受傷原因は,乳歯で転倒が多く,衝突,転落がそれに続く。1~2歳は転落が多く,3歳からは衝突が多くなる。永久歯でも転倒が多く,次いで衝突,転落であるが,乳歯より衝突の割合が増加し,打撲も多い。
受傷部位は,乳歯・永久歯ともに上顎切歯部が多く,特に上顎の乳中切歯・永久中切歯が圧倒的に多かった。
受傷様式は,乳歯では動揺・振盪が多く,陥入,挺出,転位の不完全脱臼と完全脱臼を含めた脱臼は約65%を占める。歯冠や歯根の破折も20%を越える。永久歯では,歯冠破折が圧倒的に多く,歯根破折と合わせて破折が約50%を占める。7歳までは脱臼の方が破折より多いが,8歳から破折の方が脱臼より多くなる。
初診時の処置は,乳歯で動揺・振盪がそのまま経過観察されたものが多かった。整復固定や抜歯も約10%行われていた。少数ではあるが再植も試みられていた。永久歯では,歯冠破折の修復や歯内療法が多かった。完全脱臼の再植も乳歯より多く試みられていた。
1年間にわたる小児の歯の外傷の実態調査で,外傷の予防法と処置法の確立が強く求められている。今回の調査に引き続いて予後の調査を行い,処置法についての検討を行う必要がある。

© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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