抄録
歯科治療の全経過を通じて協力的であった3~8歳の健常な小児30名を園児(15名)と児童(15名)に分け,尿中カテコールアミン(AD:アドレナリン,NA:ノルアドレナリン,DA:ドーパミン)の治療前値に対する術後値の変化の割合(変化率)を年齢群別,性別に比較検討し,以下の結果を得た。
年齢群間の変化率の比較では,全ての指標において園児が高い変化率を示し,とくにAD,DAでは統計的に有意の差が認められた。男女間の変化率の比較では,園児は,全ての指標において,男児が女児に比して統計的に有意に高い変化率を示し,児童では,ADにおいて,男児が女児に比して統計的に有意に高い変化率を示していた。ADおよびDAの変化率は大きい順に園児の男児>園児の女児>児童の男児>児童の女児の順となっていた。
以上の結果より,小児の歯科治療時の情動変化には年齢要因が性的要因に比べ大きく関与しているが,性的要因も無視出来ない要因の一つであり,何れの年齢群においても男児が女児に比して大きな情動変化を示していることが明らかとなった。