抄録
ウシ象牙質被着面を70%エチルアルコールにより1分間超音波洗浄した場合の,レジンの接着性に及ぼす影響について観察した。
使用した材料別にAB2群(All-Etch,Primer A and B,Dentin/Enamel Bonding Resin: Bisco社)とSDL群(10-3水溶液,Superbond Primer,Superbond D Liner:サンメディカル社)の2群を設けた。コンポジットレジンは,クラレ社のClearfil Photo Anteriorを用いた。得られた結果をアルコール洗浄を行わなかった既報の結果と比較した。
1)エチルアルコールにより超音波洗浄を行った切削研磨後の象牙質面には,象牙細管が開口している部分が観察された。
2)非サーマルサイクリング群とサーマルサイクリング群の接着強さを比較すると,AB2群のアルコール洗浄なしの場合のみに有意差がみられ,サーマルサイクリング群の方が高かった。
3)アルコール洗浄の有無別に接着強さを比較すると,AB2群の非サーマルサイクリング群とSDL群のサーマルサイクリング群に有意差がみられ,両群ともにアルコール洗浄を行った場合の方が高い値を示した。
4)象牙質とレジン間の破壊形態については,AB2群のサーマルサイクリング群において出現率に有意差がみられ,界面破壊はアルコール洗浄を行った場合の方が,また,混合破壊はアルコール洗浄なしの場合の方が出現率が高かった。