小児歯科学雑誌
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サーモグラフィーの顎関節症診断への応用に関する研究
重田 浩樹
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1996 年 34 巻 5 号 p. 1113-1127

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抄録

対照群12名と雑音群12名および疼痛群12名を対象に安静時における皮膚表面温度の評価と咀嚼運動負荷によるM部の温度変化の評価を行い,サーモグラフィーが顎関節症の診断に応用できるかどうかを検討した。1.安静時における左右の温度差は,各測定部位において対照群と雑音群,疼痛群で有意差を認めなかった。よって,左右の温度差を顎関節症の診断として応用することは困難であることが示唆された。2.対照群の偏咀嚼の有無による安静時の左右の温度差は各咀嚼筋部において有意差を認めなかった。また,雑音群,疼痛群の症状側と偏咀嚼との間でも有意差を認めなかった。よって,左右の温度差の要因として偏咀嚼の関与を明確にすることはできなかった。3.TMJ部温度と顎関節内の血流量変化とは有意な相関を認めなかった。よって,TMJ部温度を顎関節症の診断として応用することは困難であることが示唆された。4.咀嚼運動負荷によるM部の最大温度変化量は対照群と比較し,疼痛群で有意に低値を示した。よって,最大温度変化最は顎関節症の診断として有効であることが示唆された。5.咀嚼運動負荷後の左右側の一致性は,対照群と比較し,雑音群,疼痛群で有意に低値を示した。さらに最大温度変化量到達時期は,対照群と比較し疼痛群の症状側で有意に遅れて発現した。よって,左右側の一致性と最大温度変化量到達時期とは顎関節症の診断として有効であることが示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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